2022年11月12日、東京で『動物農場』を課題本とした読書会を行いました。
ジョージ・オーウェルの他の作品は『一九八四年〔新訳版〕』を読んだことがあります。某読書会さんの課題本だったときに読んだのですが、非常に活発な意見を交わすことが出来ました。そのころからジョージ・オーウェルの作品を課題本とした読書会はうちでもいつかやりたいなと思ってました。今回課題本にできて良かったです。
さて、今回タイトルにもしたように、課題本読書会前と後について書いていきたいと思います。読書会前に私一人で読んで感じたことと、読書会で出たご意見をまとめつつ私が感じたことなども加えて書いてみます。何度かやってみてるんですが、これをやると頭の整理にもなって当日さらに楽しい!ってことが分かったので、出来るときにはやってみようかなと思っております。
ちなみに『消滅世界』Verはこちらです。
『虐殺器官』Verはこちらです。
▶※ネタバレあり 『虐殺器官』を読んで(課題本読書会の前と後)
『月と六ペンス』Verはこちらです。
▶※ネタバレあり 『月と六ペンス』を読んで(課題本読書会の前と後)
『人間失格』Verはこちらです。
▶※ネタバレあり 『人間失格』を読んで(課題本読書会の前と後)
課題本読書会は実際に参加してみないと面白さって伝わらないかなーとも思うのですが、ひとまずこの記事を「おお、こんな風なのか!」みたいな感じで、前後編お読み頂けましたら幸いです。
では、前置きが長くなってしまいましたが、『動物農場』に触れていきましょう。
えー、こほん。あ!ネタバレしますので、『動物農場』をこれから読む予定の方はバックバック!
――――――――――――ここからネタバレ―――――――――――――――――――――――
1.読書会前
読書会中にも使うので、おおきく「ざっくりと感想」「小話」「各登場人物について」「話題にしたいこと」などに分けて書きます。
<ざっくりと感想>
全体として面白かったです。読みやすくてさらさらと進んだし、ページ数は少ないのに濃いなと思いました。人間ジョーンズさんからの支配を逃れたのに別の支配者が生まれたり、以前の支配者を恐怖の対象にして自分たちに都合の悪いことに関しては黙らせたり話を逸らしたりがリアル。
動物で描かれているし物語調だからデフォルメされたイメージで読んだんですが、現実世界に当てはまることばかりで、改めて自分の立場として考えてみたらゾワッとしました。
みんなで決めたはずの最初の七戒が徐々に変わってて最後は「すべての動物は平等だある。だが一部の動物は他よりもっと平等である」だけになっているのもゾワッとします。
一番恐ろしいなと思ったのはスクウィーラー。彼の根回しがなければスノーボールもナポレオンも贅沢しはじめた段階で反乱が起こって崩壊している気がしました。
ひとまず登場した人間・動物をメモ。
・メイナー農場のジョーンズさん
・ブタの老メイジャー
・犬のブルーベル、ジェシー、ピンチャー
・メンドリたち
・ハトたち
・馬車馬のボクサーとクローバー
・白ヤギのミュリエル
・ロバのベンジャミン
・アヒル
・カラスのモーゼス
最初のシーンの10ページまでで主要なメンバーほとんど登場してました。
<小話>
11ページ。老メイジャーの演説を聞いてるとそうだそうだ!と思えてくる。
21ページ。主要メンバー登場。ブタのナポレオン、スノーボール、スクウィーラー。
22ページ。スクウィーラーの仕草は確かに説得力ある。デフォルメされた容姿で脳内補完してる自分がいる。
22ページ。知らずにいることも幸せだったのか?
22ページ。メイジャーは死ぬ前に言ったが、もっと元気なときに伝えて自分で先導してたら違っていたのでは?
23ページ。メスウマのモリー
24ページ。モーゼスの嘘をどう説得したんだろう?実在しない証明って難しい
25ページ。ビールにパンの耳を浸してカラスのモーゼスに食べさせる。ワルという表現には分かりやすい
25ページ。ニューズ・オブ・ザ・ワールド?
26ページ。反乱成功
26ページ。ジョーンズ夫人はこっそり出ていってるけどジョーンズさんと仲悪かったのかな?
27ページ。井戸に投げ捨てる。絵面を想像すると面白い
28ページ。ここが幸せのピークな気がする
31ページ。前足の指関節2つでブラシを持つ姿かわいい
32ページ。最初の七戒
33ページ。メスウシたちのミルクからすでに搾取が始まっている
36ページ。ボクサー。わしがもっと働く!
37ページ。ベンジャミン マイペースに働く。トップが変わって変わる人変わらない人。職場にもいるなあ。
41ページで早速七戒が一つの格言に。「四本足はよい、二本足は悪い」
42ページ。ナポレオンが子犬を隔離。
44ページ。ジョーンズさんを引き合いに出す
46ページ。隣接農場。フォックスウッドのピルキントンさんとピンチフィールドのフレデリックさん。国に置き換えることもできる。ライバル企業とも。
48ページ。ジョーンズさんたちが襲撃ウシ小屋の戦い
49ページ。ふくらはぎつつきは痛い
51ページ。ガチョウの群れが追いかけてくるの怖い
55ページ。モリーいなくなる
56ページ。多数決で決めている。スノーボールとナポレオンのいがみあい
57ページ。風車
58ページ。ジョーンズさんが3冊持っていた本。不運が重なっただけで、過去は本当に熱心な人だったんだろうなあ。
61ページ。しゃべっているほうに同意してしまう
62ページ。スノーボール退場
64ページ。ナポレオン独裁政権が始まる。日曜の会合がなくなり、ブタの特別委員会が非公開でいろいろ決めるようになる。
65ページ。スクウィーラーが曲者。うまく丸め込んでいる。いなかったらナポレオンも上手くいってない気がする。
66ページ。同志ナポレオンが常に正しい。ボクサー盲目的に信じている
67ページ。スクウィーラー厄介。スノーボールを悪者にしてナポレオンを祭り上げている。
73ページ。最初期の決議とは違うことをやり始める
76ページ。農場邸宅に住み、ナポレオンを指導者と呼ぶ
77ページ。シーツのあるベッドで寝てはいけない。改ざんさせられていく。怖い。ここらへんからゾワゾワしてきた
80ページ。風車大破
81ページ。風車の件をスノーボールのせいにする
90ページ。なんでもかんでもスノーボールのせい。ウシ小屋の戦いの記憶の改ざん。妻によく〇〇を最後使ったのはあんたやと怒られる。証拠や記録がないと記憶が正しいと言い切れないの分かる
94ページ。ブタ4匹を始末
101ページ。理由なしに、が追加されている
105ページ。産声が同志ナポレオン!はちょっとどうかと
110ページ。フレデリックに売却でみんなぽかーん。私もぽかーん
113ページ。フレデリック襲撃
129ページ。カラスとどまるの容認されてたのはなぜ?扱いが変わってる
130ページ。引退間近のボクサー。体を壊す
133ページ。ベンジャミンが叫ぶ。ボクサー解体業者に連れ去られる
136ページの発表がおそろしい
139ページ。10章
142ページ。空腹、労苦、幻滅こそは、生の不変の法則なのだよ ベンジャミン
145ページ。二本足で立つスクウィーラー。ゾワッとする
147ページ。最後にはすべての動物は平等だある。だが一部の動物は他よりもっと平等である。だけに変わっている
156ページ。序文案 4社に出版を断られる
序文があることで多様な読み方が難しくなる。読まなければ本文はおとぎばなしとしても楽しめる
185ページ。訳者あとがきがわかりやすい。一連の歴史を知ってるからストレートな批判だと分かるが、当時よく出版できたもんだ。オーウェルもいらいらしてる
193ページ。脱糞が排泄に改められている。改変がほとんどなかった
197ページ。冷戦もオーウェルが考案した用語なの?アメリカの反共政策のツールとして使われるようになる。映画版ではベンジャミンが圧政を打倒する
203ページ。転回点はぶたによるリンゴとミルクの独占めっちゃ早い段階…
203ページ。権力者だけでなく我々も批判されている
<各登場人物について>
・メイナー農場のジョーンズさん
・ブタの老メイジャー
・犬のブルーベル、ジェシー、ピンチャー
・メンドリたち
・ハトたち
・馬車馬のボクサーとクローバー
・白ヤギのミュリエル
・ロバのベンジャミン
・アヒル
・カラスのモーゼス
<話題にしたいこと>
・自分は誰が近い?誰に感情移入してたか。
・どんな絵柄で想像した?かでだいぶ印象も変わる気がする。日本はアニメ文化があるからデフォルメされたイメージしてしまう人多いのでは?イギリスではどうだろう?
・同志諸君という言い方は洗脳効果がある
・ジョーンズさん時代、スノーボール&ナポレオン時代、ナポレオン時代、どの時代が良い?
・スノーボールとナポレオンだったらどっちにつく?
・ブタがいなかったら反乱は成功してない。
・新訳以外で読んだ方は?
・この結末にいたらないよう、動物たちはどの段階で何をすべきだった?
……はい!
というところが、読書会前に私自身が気になってたところでした。的外れなところもあると思いますが、ひとまずメモメモ。詳しい方がいらっしゃれば是非教えて頂きたいなと思っている次第です。では、ここから先は読書会後に感じたこと等を書いていきます。
2.読書会を終えて
ひっじょー------に面白い回でした!!
いやー、毎回課題本読書会は始まる前はどんな話になるのかなーとドキドキするんですよね。ですが、皆さんの意見を一巡しているときにはもう「あ、面白い」となります。始まる前のドキドキはどこへやら。面白い面白ーいとなります。一巡したあとは出た意見の中から再度質問をしたり新たに疑問に思った点を話したりしました。
以下は箇条書きです。
・友人に勧められて読んだ(「ベンジャミンをよろしくお願いします」と言われて)
・生き残ったベンジャミンの絶望が深い。
・ベンジャミンは謎めいている。
・中立的立場はかえって悪いことになる。
・権力が集中しちゃうと抗うのは難しい。同じ能力同士ならば軌道修正もできるが…。
・ベンジャミンは何か行動を起こしてと思った。
・スノーボールは反撃できなかったのか。どうなったのか?
・新訳版だと155ページで物語は終わっていて残り何があるのかと思った。
・アニメもある。
・読む前は人間が動物に飼われる話を想像していた。一つの農家の話におさまっていて小さな話だと思った(予想を裏切られた)
・ボクサー好き。
・角砂糖の山みんな好きなのかな?
・どう銃を撃つの?
・一九八四年を読んでいたので、同じように人間が動物に飼われる話だと思ってた。
・レポートや報告書は官僚制への皮肉では。
・人を支配するときに歌はよく出てくる。
・スクウィーラーが新訳版では「ですぞ」口調で、そのたびにムックがイメージとして出てきた。
・新訳版以外ではスクウィーラーは堅い口調。
・角川の本で先入観なく読んだ。ナポレオンと出てきたのでフランス革命をいじってるのかと思いきや同志と出てきて、実際そうだった。
・人によってはおとぎ話として読める。
・欧米から見た日本という見方も出来る。
・動物農場は知らなくて読んだが終わり方が中途半端だと思った。岩波で読んでも同じ。
・同じことをなんで繰り返すの?と思った。誰をどう風刺しているのか、読書会で聞きたいと思って今日は来た。
・動物農場は40年前に知った。出版断られていた部分で忖度って日本だけじゃないと思った。
・カラスのモーゼスはブタたちに容認されている。ガス抜きでもある。
・なぜ恐怖政治がまかりとおってしまうのかがよく分かる。何故成立するのか考えたら敵の存在と事実を記録しないことにあると思った。適切に保存していれば良かったのでは。
・怖面白い作品だと思った。
・勝者が語っていくため記録は上書きされてしまうことがある。
・記録があっても怖い。一九八四年では主人公は歴史修正の仕事をしている。
・モリーやスノーボールは途中で退場するが、出ていった者たちの方が幸せだったんじゃないか?(そのあとのことを考えると)
・スクウィーラーはあえて難しい言葉を使っている。
・羊がめっちゃ出てくる。
・ベンジャミンはロバなので馬よりも劣った存在として描かれることが多いがどちらかといえばクレバーに描かれている。
・アニメ版では最後動物たちが反乱を起こす内容に変わっている。
・ベンジャミンには反乱起こしてほしくない。
・スクウィーラーはどういう気持ちであのポジションにいたのか。イメージはスネ夫。
・ナポレオンの本心も分からない。確固たる思想がない。
・動物からすれば人間は動物ではない。
・カンガルーとかいたら……二足歩行の動物いっぱいいるけど。
・そうなったら別の理由付けするんでしょうね。
・スノーボールうさんくさい。
・動物たちはわりと幸せでした→人間の幸せも為政者の思想によって左右されるのでは。感受性やらも。そう考えると……。
・権利など主観的にならないもので判断をするのが良いのかも。
・ボクサー働きすぎ。周りにいるとプレッシャー。
気が付けば15時になり、読書会は一旦締めてお知らせをしました。その後も少しフリートークして、会場を出てからはスピンオフ企画へ……。
『動物農場』については以上です!
と、こんな感じで読書会前と後について感想と出たご意見等を書いてみました。
私自身の何か考え方が変わるというよりは(そういうときももちろんありますが)自分一人では気づかなかった点に気づくことが出来たり、一冊の本でここまで喋れるのか!という発見がいつも面白かったりします。読んでみて何も思い浮かばなかったなーとか特に話すことはないかなーと思っていても、色んな人の意見を聞くだけでも楽しいですよ。
ちなみに『動物農場』を課題本にした時の読書会のレポートはこちらです。
▶《東京》2022年11月12日(土) 推し本披露会&『動物農場』課題本読書会レポート
以上で終わります。
お付き合いいただき、ありがとうございました!