※ネタバレあり 『消滅世界』を読んで(課題本読書会前)

消滅世界
村田沙耶香
河出文庫

村田沙耶香さんの作品には『コンビニ人間』と『殺人出産』に触れてきました。特にコンビニ人間は以前課題本にしたこともあり、個人的感想ということで少し長めの文章も書きました。

■O型人間、コンビニ人間
https://iro-doku.com/archives/2493

改めて読んでみましたら、このころのワタクシちゃんとしてますね←
ちょっと前にも、初めて東京で飲み会をしたときのレポートを読み返したりしたんですが、しっかりと自分の気持ちを書いているなあという気がしました。最近ののーさんったら全くもう……ぷんぷん!という反省もこめて、今回はしっかりめに書いていきたいと思います!

『消滅世界』は以前推し本披露会でも紹介されていました。それ以来ずっと気になっていた作品!そのあとに一度読んだ気がしたんですが、本棚に見つからなかったので今回再度購入しました。読み始めてすぐに気付きました読んでました!(推し本紹介してなかったのは何故かしら?)

今回久しぶりに読むことにしたのは、2021年5月29日の課題本読書会の課題本としたからです。課題本読書会とは、事前に読了しておいた課題本について語り合う形式の読書会です。課題本を読書してる最中に感じたこと、読後に感じたこと等を自由に発言しあいます。

彩なす家オンライン読書会のお試し版なので、「どなたでもご参加ください」とはまだ出来ないのが心苦しいところではありますが……。とにもかくにも、課題本をきっかけにしてまた読むことが出来て良かったです。

彩なす家オンライン読書会が6月から本格始動することと、『虐殺器官』を没頭して読めたことがきっかけで、ワタクシの『読書器官』が最近再び熱を帯び始めております。とにかく今は読書が楽しいモード!去年は何だったのかしらってなくらい、今は時間があれば本開いてます。今三冊くらい同時進行で読んでいますがそれはさておき。あ、『虐殺器官』は8月に課題本にしますので、もう読み終わってるけどそのころに書きたいと思ってます。

さて、今回はタイトルにもしたように、課題本読書会前、つまり私一人で読んで感じたことをあらかじめ書いておこうと思います。課題本読書会が終わったら「課題本読書会後」として、再び『消滅世界』に触れたいなと思っています。こうしたことはこれまでやってこなかったのですが、そういや課題本読書会の面白さを伝えるには実際に書き出しておいた方が分かりやすいんじゃないかなーと思い、実験的にやってみようと思いました。おお、こんな風に変わるのか!みたいな感じで、前後編お読み頂けましたら幸いです。

では、『消滅世界』に触れていきましょう。えー、こほん。あ!ネタバレしますので、『消滅世界』をこれから読む予定の方はバックバック!あと5/29の課題本読書会に参加される方も、当日はご自身の感じたことを話していただきたいので、これを読むのは終わってからでお願いいたします。

――――――――――――ここからネタバレ―――――――――――――――――――――――

面白いです、消滅世界!!!

ぜひ、読んでほしい!!

そして語り合いたい!!(だから課題本にしたんですけどね)

この作品では、人工授精で子供を産むことが常識となった世界が描かれています。子どもを産むのにわざわざセックスをする必要がなくなった世界です。舞台は日本なんですが、考え方が今現在私たちが実際に暮らしている日本とは全く異なります。なんと、夫婦間の性行為は「近親相姦」としてタブー視されているのです!!

まあ、「子どもを産むのにわざわざセックスをする必要がない」となれば、ありうるのかもしれんが……しれんが、お話の世界とはいえ、そんなことありえる!?と、多分読まれた方は思うことでしょう。初っ端から受け入れられなくて読むのをやめてしまう人もいるかもしれません。日本だったらまあもしかしたらありうるかもしれんが、外国はどうなる?どうしてるんや!夫婦でセックスせんのか!?とかとか、違和感爆発!?かもしれませんが、そこらへんの設定関連で読むのをやめるのはもったいない!とにかく息を止めてダーッと一気読みすることをおすすめします。283ページ分くらいの息止めなんでいけるっしょ!!(唐突なマウンティング←)

冗談はさておき、「ん?」と引っかかる部分は人によっては本当かなり多くあるんじゃないかと思います。これは舞台が日本で、時代設定も確か現代(もしくは近未来だったかな?)だからでしょうか?自分自身の今暮らしている現実世界と似すぎているから、自分と切り離して読むことが出来ないのかもしれません。転生もの!とか、ファンタジーもの!みたいに、ちょっとジャンル分けして読めないところがある気がしました。

主人公の雨音は、両親が愛し合って生まれた存在です。

「雨音ちゃんも、大きくなったら、好きな人と結婚するのよ。そして、恋をした相手の子供を産むの。とっても可愛い子供よ」

「雨音ちゃんも、いつか好きな人と愛し合って、結婚して、子供を産むのよ。お父さんとお母さんみたいに。そして愛する二人で、大切に子供を育てるのよ。わかった?」

そんなことを母親は幼いころの主人公に言い聞かせます。母親の言うことが絶対という環境下で植え付けられた価値観とでもいいましょうか。主人公はそれが世間的にはちょっと変わった生まれ方だったと知ったのは小学四年生のころでした。人工授精で子供を産むことが常識となった世界で、それは当たり前ではありませんでした。

この母親の考え方は、私たちの住む現実世界でいえば、「まあこういうこと言うよなあ」「小さいころにそういうこと言われたなあ」と思う方もいるかなと思います。ステレオタイプ的な役割として出てくる母親ですが、共感できるかというとそうでもありません。それは何故かは、うーん、あまりうまく言語化出来ないのですが、母親は母親で自分自身の信じるもの、価値観を植え付けようとしているように感じるからでしょうか。現実世界にいたら別段気にすることもない発言が、作中で言われると違和感を抱いてしまうという不思議。既にこの時点でどっぷり作中の世界観に浸っていたからかもしれません(まだ16ページとかですけどね)

男女ともにとあるタイミングで避妊処置をするため(そういえばどんな処置なのか気になりますが)、妊娠するには避妊器具を外さなければなりません。父親と母親は、わざわざ避妊器具を外して性行為に及び、妊娠したのでした。あ、母親に対する違和感はここらへんかもしれません。読書会で話題にしよーっと!といって忘れるやつ←

登場人物の話でいえば、樹里は序盤好きな人物でした。「大切なものは、他人に見せると簡単に踏みにじられる」なんてセリフはついメモをとったりもしました。が!!しかし!読み進めていくうちに樹里に対しても違和感を抱きました。主人公の母親と似ている、と思ったのです。対極にいるように見せかけて、実は樹里は樹里で母親と似た部分を持っているなあと。どこが、というと、「自分の主張するもの以外を否定する」部分です。母親はヒトではないものに恋をする人々を小馬鹿にします。樹里もキャラクターは性欲処理のために生み出された存在として、キャラに恋することを否定します。ヒトに対する捉え方は母親も樹里も違うのですが、共通してキャラに恋する人々=自分の主張するもの以外を否定しています。主人公がだだだーっと反論したことで樹里は主人公に対してだけは一定の理解を示してくれたのですが、だからといって主張が変わったわけではありません。

これを置き換えると、「きのこの山派」が「たけのこの里派」を否定する、「たけのこの里派」が「きのこの山派」を否定するような構図に思えてきました。読書関連で言えば小説派がビジネス書派を否定したりするような感じですかねえ。

ただ、そういった価値観ってもちろん私自身にもあったり、皆それぞれあったりして責められるようなことでもないよなあなんて思ったり。男性同士とか女性同士とか、そういう風に置き換えることも出来る話でもあるしなあなんて。コンビニ人間の時にも感じましたが、「普通とは?」という自分自身の中にこびりついている「普通」らしきものをグニャグニャグワァァン!と揺さぶられます。非常に違和感を抱きつつも、妙に納得する部分もあったり、読んでいるうちに作品の方に出てくる常識が常識なんじゃないかと思えるような感覚に陥ったり……。

ところで樹里が出てきたのは46ページ。良いなと思えたのが50ページあたりなんですが、78ページの時点で違和感を抱きました。第一印象が変わることってまああまりないと思うんですが、たった28ページで覆るって、とんでもねえななんて思いましたまる。

63ページからはⅡとなってまして、第二部?なんですが、ここでは夫との話が描かれています。子供はまだいない状態です。夫には恋人がいて、妻である主人公も知っています。のちに主人公も同じマンションの男性と恋人状態になったりします。夫婦間の会話でもこのあたりは「当たり前」に話題として出てきます。

80、81ページでは母親が出てくるのですが、こっちの現実世界ではまさに母親が言いそうなことを言います。序盤には母親に対して違和感満載だったものの、今回は不思議とあまり気になりませんでした。私自身の中で「そういう人」認定してしまったから?物語上も時が進んでいるから?ページ数を重ねて私自身がこの世界観に浸ったから?分からん。読みながらメモとってるんですが、メモには「正常な世界ってなんだろう?」なんて書いてました。しかし読み返してもこのメモ自体の意味がよう分からん(意味なし←)

88ページあたり。今度は女子社員と結婚や子供の話になります。何故結婚するのか?何故子供を産むのか?物語上でも、こちらの現実世界でもそうですが、ここらへんは問われると回答が難しかったりしますね。ここらへんで感じてメモしたのは、「こどもの頃に植え付けられた価値観を否定することはかなり難しい」でした。

あ、ちょっと脱線しますが、以前「マツコの知らない世界」でマツコ・デラックスさんがテーマ「ギャル雑誌の世界」のときに発した名言が印象的でした。

「全てのことに意味なんか無い。ずっと好きなことを貫いてやっていればそれが意味になる」

名言、置いておきますね(スッ)

詳しくは「マツコ 意味なんてない」で出てきましたのでよかったら調べてみてください。そういえばギャルってやっぱり惹かれるところがありますね。ギャル雑誌の世界の回は神回でした!あ、本当に脱線してきたので戻ります。

この第二部ですが、夫は頻繁に「家族」という言葉を使います。「家族なんだから」とまるでそうじゃない状態から「家族」というものになろうとしているような、なっていかなければならないというような脅迫観念的な何か?自分自身を洗脳していこうとしているかのような怖さがありました。「家族なんだから」という言葉が出てくるたびに引っかかるので私息止めて読んでました。でも、妙に分かる気もしてしまうんですねえ。ここがまた恐ろしいところ。なんで恐ろしいと感じるかというと、私自身がそもそもこちらの現実世界の「家族」というものに違和感を覚えているからでしょう。痛いところつかれた!アイターッ!ってなるんですよね。

作中、恋愛や家族を主人公たちは「宗教」と捉える場面があります。96ページあたり。独身時代は「恋愛」という宗教に苦しめられ、今度は「家族」という宗教に救われようとしている。ああ!ってなりました。

さて、129、130ページあたりで「エデンシステム」なるものが出てきます。千葉が実験都市として「家族」というシステムではなく、全ての大人が全ての子供の「おかあさん」になるというシステムです(お父さんはどこ…?)

セックスもなければ、家族もない世界。主人公はこのシステムに否定的です。対して夫は肯定的です。二人の関係に次第にずれが生じてきます。いえ、もともと生じていたずれが徐々にあらわになっていく感じですかね。夫が恋人と別れることになったあと、二人は実験都市千葉へと引っ越します。

というところは一旦置いときまして、167ページのフレーズがめっちゃ好きでした。「幸福な家から出る音色を鳴らす」という表現。ぱっと読むとなんか綺麗な表現なんですが、これ、ここまで読んでから読むとめちゃくちゃ怖い!ああ!怖い!ってなりました。さらっと書かれているはずなのに一旦止まってメモしちゃいましたからね。息止めの効果もなかったですからね。

176ページの医者との会話も印象的でした。古風、古い風習は、たまに思いがけない場所で、細々と残っていたりするもの、というところ。職場の方とお話していてめっちゃ面白かった話を思い出したので、ここらへんは読書会で言いたいなと思います(って書いといて忘れるやつパート2!)

195ページの公園でのやりとりもぞわっとしました。映像でイメージするとめちゃくちゃ怖い!!

……はい!!ここまでー!

ここから先はまだ読むのをやめておりまして!というのも、前日にもある程度読んどかないと読書会当日に内容忘れちゃうからなんですよねー。印象的な部分はもちろん覚えているんですが、細かい部分を忘れてしまう……。かといって前日に1ページから読み返すのも間に合わないので、残り80ページくらい残しておくという戦術でいきたいと思います。これも今回初めての試み!一応以前読了しているので結末は何となく覚えてますし、まあ何とかなるでしょう!

色々と書いてみましたが、やはり私はなかなかバシッと言語化出来ないところが多く……また、さらっとスルーしてしまったところもあるかなと思います。課題本読書会で色んな方のご意見を聞けるのが今から楽しみでしす!!

あ、一つ心配なのは、作中セックスセックスって頻繁にワードが出てくるので、課題本読書会でどうするかですねえ。ワタクシ、セックスって言葉を発したことが一度もないものでドキドキしちゃう!!文章ではいくらでも書けるのに。今から練習しておこうかしら?

そんなこんなで今日は終わります。

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!

※課題本読書会が終わりましたので「課題本読書会後」として記事アップしました。
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