小説なのに映像が浮かんでくる本『世にも奇妙な君物語』

世にも奇妙な君物語
朝井リョウ
講談社文庫

タモリさんがストーリーテラーの「世にも奇妙な物語」は皆さんご存知だと思いますが、この本はその世にも奇妙な物語が大好きな朝井リョウさんが「映像ではなく文章」で「放送される時と同じように二時間分の五つの話を一人で書き上げて」生まれた作品です。

世にも奇妙な物語がベースにあるので、ゾッとする話だったり、そうきたか!と思わせてくれる話があったり、涙返せって話があったりで、色んなバージョンの5つの話が楽しめます。

朝井さんはミステリー作家ではないんですがミステリー要素も結構入ってて、今回の世にも奇妙な君物語はミステリー要素が強めです。ので、ミステリー好きの方は割りと楽しめるんじゃないかなーと思います。

1話はシェアハウさない。フリーライターの女性が話題のシェアハウスを深く掘り下げるためシェアハウスに自分で住んでみて潜入取材するが……というお話。

2話はリア充裁判。コミュニケーション能力促進法という法律が成立した日本が舞台で、「日本人らしい豊かなコミュニケーション」が本当に身についているか調べる場としてリア充裁判があり、無作為の招集で姉が選ばれた。そこで「ひどくひとりよがりで孤立している」と評価されて矯正すべきと言われ、ハロウィンでコスプレしたりスクランブル交差点で知らない人とハイタッチしたり、SNSでリア充アピールしたりするようになる。そんな変わってしまった姉を見てきた妹もリア充裁判に招集されて……という話。

3話は立て!金次郎。幼稚園の先生の金次郎がモンスターペアレントの親たちに負けずに奮闘する話。園児たちをどう平等に扱うか奮闘する熱血青年。一番好き。

4話は13.5文字しか集中して読めな。長い文章を読まなくなったネットユーザー向けニュースを担当する女性が主人公の話。

5話は脇役バトルロワイアル。大物演出家の主演オーディションに臨む青年の話。これはトリを飾るにふさわしい。

この本は飛ばし読み厳禁です。1話から順に読んでいくことをおすすめします。ちょっと先覗いてみようかな、ってのは絶対やめた方がいいです。それだけ言っておきます。

ちなみに本家の世にも奇妙な物語は今日21時から23時10分に秋の特別編が放送されます。お見逃しなく!私は移動中で観れませんが録画して観たいと思います!

以上です!