2024年8月3日、東京でウィリアム ゴールディングの『蠅の王』を課題本とした読書会を開催しました。
今回は主催含め14名(女性5名、男性9名)で読書会を開きました。初参加の方が3名でした。お集まり頂いた皆様、ありがとうございました。
このレポートが初見の方もいらっしゃると思いますので、まずは「読書会について」と「彩ふ読書会の目的」についてご説明させて頂きます。
目次
読書会って何?
読書会とは、ざっくりいうと本が好きな方が集まっておしゃべりをする会です。
「本をたくさん読んでいる人の集まりなんじゃないか……」「かなり知識が必要なんじゃないか……」と思っちゃうかもしれませんが、そんなことはありません。読書量も知識量も必要はなく、必要なのは本が好きであるということだけです。読書好きの交流会=略して読書会と考えてみたら、少しハードルが下がりますでしょうか。
読書会は、本が好きな方にはオススメな会です。
自分一人では手に取らなかったであろう本との出会いがあったり、本の話題を通じて普段接点のない方とお話することが出来ます。
課題本読書会とは?
事前に読了しておいた課題本について語り合う形式の読書会です。
課題本を読書してる最中に感じたこと、読後に感じたこと等を自由に発言しあいます。参加条件は「課題本の読了」のみです。
推し本披露会が「これまで」を共有する機会とするならば、課題本読書会は「これから」を共有する機会となります。同じ本を読了したという体験こそが、まずは大きな意味を持ちます。「これはさすがに読了は厳しいだろう・・・・・・」といった本が選書されるかもしれません。何とか読了したけど、当日特に意見が出ずに沈黙してしまったり話が脱線してしまう可能性もあります。ですが、本を読んでいる間や読書会中の瞬間瞬間を共有していくことが大切だと考えております。
彩ふ読書会の目的
簡単に言えば、関わって下さる方々の「第三の居場所作り」です。
家庭でもない。
職場でもない。
貴方にとっての、第三の場所。
居心地の良い場所。集まれば何だかほっこり出来るような場所。色々脱ぎ捨てられるような空間。そんな「居場所」を作っていきたいなあと思っています。
教養を深めたり、読書の幅を広げるといった事も目的ではありますが、何より一番は集まること。時間や空間を共有していくこと。
集まって顔と顔を合わせれば何か新しいことが生まれてくる事もあるでしょう。新たに興味を持ち始めることや、やりたい事、今までやってみたかったけどやれなかった事に挑戦したくなるかもしれません。まだまだ理想を語るだけになってしまう段階ではありますが、貴方自身のやりたい事が叶う場にもしていきたい。
「彩ふ」は「いろう」と読みます。
色んな価値観を持った方々が集まり、色が美しく交じりあう、というような意味で名付けました。読書会は本関連の集まりではありますが、それは一つのキッカケとして捉えて頂けたらなと思っています。目的としては以上です。
読書会レポート
では、読書会のレポートに戻ります。
読書会に参加する方法はいくつかあります。参加申込方法のページからご確認ください。
お申し込み頂いた方には一週間前に最終確認メッセージが届きます。内容を確認し、当日は受付時間内に会場までお越し下さい。
会場に到着したら受付をしていただきます。PassMarket以外の方は当日現金払いとなりますので、受付時にお支払いをお願いいたします。グループ分けも受付時にお伝えしています。
開始時刻になったら読書会開始です。
まずは司会の私のーさんがご挨拶させて頂きます。その後、皆さんに自己紹介をして頂きます。お名前、普段読まれている本だったり好きな作品や作家さんなど、簡単なもので構いません。
自己紹介が終わりましたら、本の感想に移ります。
今回の課題本はウィリアム ゴールディングの『蠅の王』でした。
皆さん会が始まるまでには読了しておられますので、ネタバレを気にする必要なくお話することが出来ます。それぞれ感じることは違いますが、どの意見が正しいとか間違っているという事はありません。同じ作品を読んでも気になる点や印象に残るところというものは違うものです。こういう視点もあるのだ、といった部分をあえて楽しんでみると、この会は楽しむ事が出来るのではないかと思います。
難しい事を言う必要はありませんし、お喋りするのは苦手だと感じる方もいらっしゃると思いますので、無理して発言する必要もありません。
まずはお一人ずつ読んで感じたことを話して頂いて、そのあとはフリートークとなります。時間になりましたら終了です。
当日の流れは以上です。
当日出た意見はこちらです。
・普段海外文学を読まないので良い機会だなと思って読んだ。100ページくらいまで読んで、これは大変気力がいるなと感じた。ラルフvsジャックのあたりからは一気に読んでしまった。自分は子どもが苦手だが何でかなと思ったが、子どもを統率しようとか、組織を作る困難さとかがあるからではないか。子どもたちは赴くままに行動している。何人いるか数えていない。大人がコントロールしないといけない。ジャックが豚を狩り、残虐性をみせるがストッパー役がいない。仲間が死ぬところまでいっちゃうんだなと思った。
・ピギーが気にな多。おチビより下に見られているが賢いしなくてはならない存在。子どもではなく大人が取り残されたらどうなっていたのか聞いてみたい。大人でもこういう状況下におかれたら一緒ではないか。
・世相の反映もあると思うので、いつ頃刊行されたのか気になって調べた。ジャックはナチスの台頭、ラルフはポピュリズム的。もたらすのは何かと考えたときに、人間のエゴがあらわされているのではないか。
・バトルロワイアル的なものを想像していたが違った。ラルフが秩序。戦争という設定はいらなかったのではないか。
・読み進めるのに苦労した。人物に感情移入できなかった。同じパターンが続き飽きてくるが、最後の展開は早く最後まで読めた。
・カズオイシグロや村上春樹が好きな人にはおすすめとあった。十五少年漂流記とは見えなくて、なんでか、最初から不穏な空気があった。小さい年少組の子もいたのは驚いた。ジャングルのイメージ、情景が想像つかない。ラストのスピード感はすごかった。ジャックのような「理屈じゃどうしようもない相手」はどうしたら良いのか。人間って何だろうと考えさせられた。
と、このあたりはお一人お一人にまずお聞きしたことでした。一巡してからはフリートークで時間まで話をします。フリートークではがちがちに話す内容を決めているわけではありませんので、ここまでに出てきた意見を掘り下げたり、新たな疑問、皆に聞いてみたいことなどを話します。
私個人として印象的だったのは、まず参加者の方も仰られていた「情景が想像つかない」という点でした。他の本ならば島の地図が載っていたり登場人物一覧が最初に載っていたりする作品もありますが、こちらの作品にはそういったものがありません。情景描写は細かく書かれているはずなのに、なぜか頭に入ってこない……私なんかは無人島といえば「冒険少年」なので、あばれる君がサバイバルするイメージで島の形を想像していました。他の作品もあげられる方もおられて、それぞれ作品の文章というよりは自分自身の描く無人島の形で補完しているような感じでした。で、これは何故なのか。もしかすると、子ども視点で描かれているので、島の描写もあえて視野を狭く書かれているのではないか、なんて意見もあって面白い!となりました。
ラルフとジャックたちは次第に対立していきますが、「達成感が重要だったのでは」という意見も新鮮なものでした。船に気づいてもらうために火を絶やさないでいようとするラルフ側は、けれどそれがいつになるか分からない。一方ジャック側の「肉」は目の前にあってすぐに達成感を得られる。先行きが不安な中ではつい「肉」に行ってしまうのも分かる気がします。
今回はのーさん激推し!とお知らせをしていましたが、「どこが激推しだったか」を語るのを忘れていました。前回読んだときもそうなんですが、この物語はこうしたら良いのに……という部分をことごとくへし折っていくんですよね。なので、読みながら「じゃあラルフがピギーをからかうことなく意見をもっと聞いていたら?」とか、「あの瞬間にサイモンだと気づいていたら獣の不安はなくなったのでは」といった風に、色んなifが浮かんでくるんです。でも、どういった選択肢を選んでも「どうしてこうなった」が「どうなってもこうなった」で終わってしまう。どう進んでもバッドエンドしか見えてこないのが、かえって面白いなと。シミュレーションゲームとかがお好きな方は、自分なりのルートを考えながら読めると思うので、楽しいんじゃないかなと思います。
今回はなかなか読み終わるのに苦労された方も多かったのではないかなと思います。お付き合いいただき、ありがとうございました。
次回は『砂の女』です。こちらも私個人としては非常に面白い読書体験が出来た本でした。ここで書いちゃうと先入観が生まれてしまうと思いますので、そのことは読書会中とレポートでまたお話したいなと思います。
さて、百聞は一見に如かずですので、ぜひ会場に足を運んで実際にご自身で会を体験して頂けたら幸いです。いやいや、もっと事前に調べておきたい!という方は、下のリンク先に詳しいことを書いていますので、宜しければチェックしてみてください。
課題本読書会は、普段手に取らない作品に挑戦できる機会となります。読んだことがある作品の時に参加するのももちろん大歓迎ですが、「読んでみたいと思っていたけど……」と積読状態になっている本、全くタイトルも知らなかった本にも挑戦してみていただけたら幸いです。締め切り効果がありますので、挫折していた本も意外と読めたりしますよ!
お会いできるのを楽しみにしております。
参加者からのレポート
今回はありませんでした。
SNSアカウントをお持ちの方は、ハッシュタグ「#彩ふ読書会」で感想をひとことでも書いて頂けると嬉しく思います。読書会を続けていく上での励みになります。
どうぞよろしくお願いいたします。
最後に
今回ご参加いただいた方には、10、11月、来年1月の読書会に関するアンケートにご協力いただきました。投票数の多かったもので課題本が決まります。回答してくださった皆様、ありがとうございました!
a0e0bcae0830a8525d105264b7039c5c9つの作品に対し、1人3作品に投票をお願いしました。4つ以上回答されていた方の分は無効票とさせて頂いてます。結果はこちらです!
9票 犬のかたちをしているもの
8票 一九八四年
7票 黒い家
6票 ロビンソン・クルーソー
6票 「ない仕事」の作り方
6票 暇と退屈の倫理学
6票 銃
4票 君は永遠にそいつらより若い
2票 きりこについて
というわけで……10、11月、来年1月の課題本が決定しました!順番は私のほうで組ませていただいて……
10/19(土)の課題本は貴志祐介さんの『黒い家』です!!
内容
顧客の家に呼ばれ、子供の首吊り死体の発見者になってしまった保険会社社員・若槻は、顧客の不審な態度から独自の調査を始める。それが悪夢の始まりだった。第4回日本ホラー小説大賞受賞。
横断検索はこちらです(外部サイトへ移動します)
http://book.tsuhankensaku.com/hon/isbn/9784041979020
前回のアンケートでは惜しくも4位でしたが、リベンジ達成ですね!貴志祐介さんの作品好きで一時期ハマってたんですが、『黒い家』は私も意外と未読(だって怖いって聞いてたから……)なので読むのが楽しみです!
11/9(土)の課題本は高瀬隼子さんの『犬のかたちをしているもの』です!!
内容
「子ども、もらってくれませんか?」彼氏の郁也に呼び出された薫は、その隣に座る見知らぬ女性からそう言われた。薫とセックスレスだった郁也は、大学時代の同級生に金を払ってセックスしていたという。唐突な提案に戸惑う薫だったが、故郷の家族を喜ばせるために子どもをもらおうかと思案して──。昔飼っていた犬を愛していたように、薫は無条件に人を愛せるのか。第43回すばる文学賞受賞作。
横断検索はこちらです(外部サイトへ移動します)
http://book.tsuhankensaku.com/hon/isbn/9784087444278
『おいしいごはんが食べられますように』の著者・高瀬準子さんのデビュー作。以前読書会でご紹介いただいてからずっと気になっていたので、私もこれから読むのが楽しみな作品です!!
2025/1/18(土)の課題本はジョージ・オーウェルの『一九八四年』です!!
内容
“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…。
横断検索はこちらです(外部サイトへ移動します)
http://book.tsuhankensaku.com/hon/isbn/9784151200533
以前お世話になっていた某読書会さんで課題本になったときにめちゃくちゃ苦労して読んだけどめちゃくちゃ当日面白くて、いつか彩ふ読書会でも課題本にしたいなと思っていた作品です。ついに来たか!!とテンションあがっております。ちなみに私は挫折しかけたので『まんがで読破』で先に読んでイメージをつけてから小説のほうを読んだ記憶があります。再読も楽しみ!
課題本にしてみたい作品としては以下の回答が集まりました。
『東京都同情塔』 九段 理江
『ミザリー』 スティーヴン キング
『トゥモロー・アンド・トゥモロー・アンド・トゥモロー』 ガブリエル ゼヴィン
『謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア』 高野 秀行
『光』 三浦しをん
『サンショウウオの四十九日』 朝比奈 秋
『グレート・ギャツビー』 フィツジェラルド
『浮世の画家』 カズオ イシグロ
次回の候補作にあがるかも?です!ご協力ありがとうございました。
最後に
上の方にも書きましたが、主催含め14名(女性5名、男性9名)で読書会を開きました。初参加の方が3名でした。お集まり頂いた皆様、ありがとうございました。
初参加の方や女性が安心して参加できる空間、男性も楽しめる空間作りに今後も努めてまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
毎月参加して下さる方はもちろんのこと、久しぶりに参加したよ~という方々との再会も非常に嬉しいものです。本が好きな方々の第三の居場所作りが目的ですので、「また参加して良いのかな?」「久しぶりだけど大丈夫だろうか?」「前回体調不良でキャンセルしてしまったけど…」といった事はお気になさらず、「あ、この日予定空いてる!参加しよう!」くらいの気持ちで、是非お気軽にご参加ください。
初めて読書会に参加して下さる方々にも「参加してよかった!」「楽しかった」「また参加したい!」と思って頂けるよう努めてまいりますので、宜しくお願い致します。
推し本披露会のレポートにも書きましたが、今回は初めての「司会原稿がない」というハプニングに見舞われ、何だかふわふわっとした挨拶から始まってしまいました。次回はスマートな主催挨拶をしたいと思います。
ここ最近、ありがたいことに課題本読書会のほうは2回、3回と続けて参加してくださる方が増えてきています。「課題本に選ばれたから」と、初めての本に挑戦してくださる方もおられて嬉しい限りです。課題本読書会はとにかく本を読み終えてくれば参加できますので!当日「読み終わったけど、何も言えねえ……」となっても問題ありません。皆はどう思ったのかな?というところを聞きに来る感じでの参加も大歓迎です。参加お待ちしております。
あ、あと毎回書き忘れちゃうんですが、初参加の方が楽しむコツは「読書会は初めてです」「彩ふ読書会は初めてです」と自己紹介の際に言っていただくことです。私のーさんはお申し込みいただいた時点で分かっていますが、他の参加者の方は知りません。「初めてです」と言っていただけると「よっしゃ!フォローしたろ!」と思ってくださる方ばかりですので、遠慮なく仰っていただけますと幸いです。
次回東京での読書会は9/21です。
▶《東京》9/21(土) 推し本披露会(読書会) 開催のお知らせ(お申し込みはこちら)
▶《東京》9/21(土) 『砂の女』課題本読書会 開催のお知らせ(お申し込みはこちら)
▶《東京》9/21(土) 「12/7の課題本を決めるという名目で集まる飲み会」のお知らせ
前回の課題本アンケートで11票を獲得し1位に選ばれたのが『砂の女』でした!今年は安部公房生誕100年の年ですし、せっかくですし、読んだことのない方もこれを機に手に取ってみてはいかがでしょうか?課題本読書会参加のコツは、「読み切る前に参加申込をする」です!!締切効果で意外と読めちゃいますので、良ければぜひ!!
こちらはまだ募集は開始していませんが、12月7日にスペシャルバージョンの読書会を予定しています。ぜひ予定を空けておいてくださーい!!
▶《東京》12月7日(土) “東京読書会SP(仮)” 開催のお知らせ
以上です。
ありがとうございました!