無意識にやっていないか?と問われる『82年生まれ、キム・ジヨン』

2023年3月12日の東京読書会で紹介した推し本。レポートでも書いていたのですが長くなりすぎてしまったので割愛した部分もあり、改めて記事にしました。

最近文庫化しましたので手に取りやすくなってるかと思います。

2016年に刊行されて100万部売れてる小説です。

主人公はキム・ジヨンという33歳の女性。娘ジウォンちゃんがいます。夫も含め三人で平穏な生活を送っていましたが、ある日突然、キム・ジヨンは自身の母親や、大学時代の先輩の言動をするようになります。夫ははじめ妻がふざけてるとしか思ってなかったんですが、だんだんそうではないということに気づきます。というのも、大学時代の先輩と夫当人たちしか知らないことまで喋りだしたりしたからです。まるで人格そのものが乗り移ってるような感じ。しかも大学時代の先輩は既に亡くなっています。他にも、かわいいスタンプだらけのメッセージを送ってきたり、明らかに妻の技術では作れない料理を作ったりする。不穏な感じが漂っていました。これはおかしいぞと思いつつ過ごしてましたが、実家に帰ったときにも別の人格が出てきたような言動がでて、親族たちが凍りつきます。その場は体調悪いとかでごまかすがこれはもうおかしいとなって、精神科へ行きます。

そこからキム・ジヨンの過去を振り返っていくという話です。一人の患者のカルテという形で書かれてて、淡々とした文章ですが、淡々としてるから読みやすい作品です。

ざっくり言うと女性差別や男尊女卑の社会、社会の不条理を描いてる作品です。韓国と日本と国が違うけど共通して読める部分もあり、男性こそ読まなあかんと感じます。

キム・ジヨンの過去を振り返っていく中で、キム・ジヨン、キム・ジヨンの母、祖母が出てくるんですが、三世代みんな考え方が違ってます。それを、個人というよりは世代間の違いとして書かれている感じです。例えば、祖母は嫁に対して「息子がいなくちゃだめだよ、息子は二人はいなくちゃだめだ」と言ったりします。で、実際に生まれたのが女の子だったとき、「二人目は息子を産めば良い」と励ます。それを心の底から思っている。嫁も嫁で申し訳ありませんと涙する。現代の若者の感覚で考えたら違和感しかないと思うのですが、祖母の世代にとっては当然のことであったのだろうと、この作品を読んで感じます。

他にもキム・ジヨンが小学生の頃の話。隣の席の男子にいたずらされることが日常茶飯事のこととして描かれています。肩に触ってきたり、目が合うと近づいてきて腕をバーンとたたいてきたり、消しゴム貸すと返ってこない。めちゃくちゃ嫌なことされるエピソードがあって、そのときは教師が助けてくれるんですが、その教師からも「あいつはジヨンが好きだからちょっかいかけてるんだよ」といわれる始末。

制服問題もあります。女子には細かい規定があり、男子もあるにはあるが黙認されていたり。

予備校同じクラスの男子とちらっと目が合っただけで俺のこと好きなんだろと勘違いされてストーカーされたり。被害者なはずなのに、自分の父からも「服装をきちんとしろ、立ち居振る舞いを正せ、危ない人は見分けて避けろ、避けれなかったら本人が悪い」とか言われたりします。

社会人になってからも同期の男性のほうが年俸たかかったり。

そういったエピソードがたくさんでてきます。

読んでいて思ったのは、私自身も女性に対して無意識にこういったことをしてきていたのではないかということです。今は気をつけるようにしているが、昔の自分を思うと反省、反省で済むのか?ということを突きつけられます。

とにかく読んでほしい、特に男性こそ読むべしな一冊です!