成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。
彩ふ読書会でも何度か紹介されていて気になっていたのですが、『本格王2022』に収録されていた浅倉秋成さんの作品が面白くって、その流れでこの作品も手に取りました。
IT企業「スピラリンクス」で行われる初めての新卒採用。スピラリンクスは初期のグーグルとかあたりを私は想像したんですが、そういったイメージで読んでいただいたら大丈夫かと思います。日本で最も先鋭的でトリッキーな会社です。そのスピラリンクスの新卒採用で、五千人の中から最終選考まで残った六人の就活生。
最終選考課題は、一カ月後に行われる選考までにチームを作り、ディスカッションをするというものでした。内容が良ければ、全員を採用するということ。どんな課題が出ても乗り越えようと、六人は議題になりそうなものを予想したり、その答えを考えたりしてほぼ毎週顔を会わせます。居酒屋に行ったりして仲良くなります。
しかし、本番の選考直前に、一方的な課題の変更が通達されます。それは、六人全員を採用することができなくなったため、内定者一人を決めるというものでした。しかも自分たちでそれを決めないといけない。もちろん、みんな内定がほしい。
えー?!六人で受かる可能性もあるっていうから六人で協力してたし仲良くもなったのにそりゃないよって感じだが、そうせざるをえない。けれど、それだけならばまだ建設的な話し合いは出来たことでしょう。そうならなかったのは、本番の選考中、六通の封筒が発見されたからでした。
そこには「○○は人殺し」という告発文が入っていたのです!
多分ミステリーものをよく読んでる方からしたら手法としては斬新さはないと思うが、「これこれ!こういうのが読みたかったんだよ!」ってなるはず。私にとってミステリーが読みたーい!となって手に取った時期だったので、まさにドンピシャな作品でした。
浅倉秋成さんは伏線の狙撃手といわれており、実際この作品の中でも「え、これも伏線だったの?!」というところが沢山あります。
本の内容として面白いのは、六人の印象が変わっていくことです。ミステリー要素も面白いんですが、そこだけじゃなく人間性も描かれていて、そこが良いんです。
Amazonで調べてみたら6月に文庫化するっぽいです。手に取りやすくなると思いますので、ぜひ!