町はずれの円形劇場あとにまよいこんだ不思議な少女モモ。町の人たちはモモに話を聞いてもらうと、幸福な気もちになるのでした。そこへ、「時間どろぼう」の男たちの魔の手が忍び寄ります…。「時間」とは何かを問う、エンデの名作。小学5・6年以上。
Twitterには「#名刺代わりの小説10選」というハッシュタグがあるんですが、私の10選に常に入っている作品です。つまり激推し本!ぜひ読んで頂きたい!
彩ふ読書会では何度か課題本にしているんですが、今後も定期的に課題本にすると思います。1年に1回は読んでおきたいんですよねー。
内容としては、あらすじにもあるように「時間」を扱っています。
時間について考えさせられますので、「時間がない!」とか「忙しい!」って思っているときほど、ぜひ読んで頂きたい作品です。
主人公はモモという女の子です。円形劇場にふらっとやってきたモモは、どこからきたのか、親は誰なのか分かりません。町の人たちは相談して、彼女の面倒を見ることにします。モモは人の話を聞くのが上手で、町の人たちは話をしていくうちにふっと心が軽くなります。人の話を聞くのが上手といっても、何かアドバイスをするわけでもなく、じっと話を聞くだけです。でも、そうすることで話している側は自分自身の中に答えを見つけ出します。
まずここが良いんですよね。誰しも「私のことを知ってもらいたい、話を聞いてほしい」って気持ちがあると思うんですよね。友達がメインで話をしていても間に自分の話を挟みたくなったり、うんうんと話を聞いてる風を装いながら頭の中では別のことを考えていたりしたこと、あると思います。しっかりと聞く、耳を傾けるのって結構難しいものです。読んでいるとハッとする部分の一つです。
円形劇場で暮らす中、道路掃除夫ベッポや観光ガイドのジジと仲良くなります。ゆったりとした時間が流れていて、平和な暮らしが続いていましたが、町の方では徐々に変化が訪れていました。灰色の男たちがやってきたからです。彼らは時間貯蓄銀行と称して、人々がいかに無駄に時間を消費しているか、将来のために時間を貯蓄すべきだと話を持ち掛けます。始めに出てくるのはフージー氏との契約のくだりなんですが、ここの追い詰められ方はなかなかゾッとします。
左官屋のニコラや居酒屋のニノなど、モモが出会ってきた町の人たちも、灰色の男の影響によって変わってしまいます。生活は日ごとにまずしくなり、日ごとに画一的になり、日ごとに冷たくなっていく。前半にゆったりとした時間を過ごす人々を見ているからか、灰色の男が出てきてからの話は余計に怖いです。そして、それだけでなく、おそらく私たちは現代の感覚でも読むと思うんですが、現代もそうだなと感じて恐ろしさを感じると思います。
さて、灰色の男たちの手によって町の人々が変化していく中、モモやジジ、ベッポはどうなるのか。
ぜひ、ここから先はご自身の手で読んでみてください。
あらすじには小学5、6年生以上と書かれているので子ども向けかな?と思われるかもしれませんが、大人が読んでも間違いなくおもしろいです。で、オススメしたいのは早めに一度読んでおくこと!
この本はご自身の年齢や今の環境によって感じ方が変わる本といっても過言ではありません。
小学5、6年生のころに読んでたよって方は、大人になって読み直すと気づく点がガラッと変わっているかと思います。私は4年ほど前に読んだのが初めてでしたが、その時に感じたことと今回読んだときとだけでも感じる部分が変わっていました。間に何があったかといえば子どもが生まれたことです。今回読んだときにはモモに感情移入するのではなく、「モモがもし自分の子だったら」という親目線で読んでいました。これがまた面白かったんですよね。「子育てしてると自分の時間がない!」と嘆いていたタイミングだったのもあり、刺さりました。きっと、また年齢を重ねていき、環境も変化する毎に、感じ方が変わっていくのだろうなあと思います。その変化を楽しむには、まずは読むべし、です!
激推しです!!