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「国宝がバズってるらしいよ」
と、妻から聞いたのが二週間前くらいだったでしょうか。
「へー、そうなんだー」
と、さほど興味はなかった私。あまりSNSを追えてなかったからか、そこまで盛り上がりを感じてはいませんでした。職場でも話題になってなかったですし、まあでも妻が言うなら流行ってんだろうなってレベル。
先日、妻と映画を観に行く予定にしてまして、元々は『岸辺露伴は動かない』を観るつもりでした。前作も観に行きましたし、今回も楽しみにしていました。ところが映画を観に行く前々日、私は言いました。
「観るの……国宝にする?」
観る前の話
気持ちが傾く前、私が『国宝』について知っていた情報はこちらです。()内はその情報を得たときに感じたことです。
・SNSでバズっているらしい(私の周囲では盛り上がってないな〜)
・上映時間は約3時間(長っ!)
・原作があるらしい(誰やろ?)
・主役誰か分からない(誰かが化粧してる写真だけチラッと見たけど、北村匠海かな?)
という、何となくしか知らない情報だけでしたが、その後いくつか「おっ」となるポイントに出くわし、気持ちが傾いていったのでした。
「おっ」となったポイントはこちらです。
・書店で『国宝』が目に止まり、原作は吉田修一さんの作品だと分かる(おっ)
・吉田修一さん原作の映画『怒り』を以前観て印象に残っていた(おおっ)
・『国宝』はその『怒り』と同じ李相日監督が手がける映画だった(おおおっ!)
・『国宝』を観た方から3時間があっという間だったと直接教えてもらう(おおおおっ!)
という情報を得たあとだと不思議なものでして、最初に抱いていた印象もガラッと変わるのでした。
・SNSでバズっているらしい(ということは面白いってことやな)
・上映時間は約3時間(ドラマ3本一気に観たりするし問題ないない)
・原作の著者は吉田修一(絶対おもろいやん!)
・主役誰か分からない(結局調べてないけど北村匠海かな?)
元々観に行く予定だった『岸辺露伴は動かない 懺悔室』は原作を読んでいるので、私の中では結末を知っている作品です。あのエピソードを映画でどう料理するのか、高橋一生さんが岸辺露伴をどう演じるのかが楽しみではありますが、鑑賞後に得られるであろう満足度は、どうしたって想定の範囲内であります。
対して『国宝』はほとんど情報を知りません。主人公がどんな人物で、どんな風に話が展開していくのか、全く知らないままでした。
遡ること6/14。この日は東京での読書会の日でした。課題本はミヒャエル・エンデの『モモ』で、「時間」や「人との関わり」がテーマとして刺さる作品です。『モモ』は毎年一回は読むようにしている作品でして、時間に追われて自分を見失ってるな〜というときに、よく『モモ』のことを思い出してハッとなります。
3時間あれば色んなことが出来ます。『国宝』がもしも自分に合わなかったら、貴重な3時間を無駄にしてしまうことに……とついつい考えてしまって躊躇していましたが、『モモ』を読んだことで気持ちを改めました。
ほとんど情報を得てない状態で身を投じてみるのって、ワクワクしないか?と。
綾辻行人さんの館シリーズに最近ハマっているのですが、館シリーズといえば第一作の『十角館の殺人』が有名です。二作目以降は『十角館の殺人』を超えれていない、みたいなことを以前聞いたことがあって鵜呑みにしてしまっていたのですが、実際読んでみるとガラッと印象が変わりました。随分と昔の作品ではありますが、ありがたいことに今の今までネタバレをくらうことがなかったので新鮮な気持ちで読めています。シリーズものの安心感と安定感に加え、ほとんど情報を得てない状態で読めているので、毎回ワクワクしながら手をつけています。上下巻ものは苦手なタイプなのですが、『時計館の殺人』でシリーズ初の上下巻だったときにはワクワクしながら手をつけました。『黒猫館の殺人』を読み終わり、いよいよ次は『暗黒館の殺人』でして、なんと四巻あるんですが四巻分も楽しめるなんて!と非常にワクワクしております。
というわけで、『国宝』も上に書いた以上のことはあえて調べずに観てみることにしたのでした。
結果、3時間はあっという間でしたし、めちゃくちゃ面白かったです。終わった直後に本屋に寄って原作本を買うほど!
映画と原作、どちらから触れるか
さて、原作のある映画を観る場合、どちらから触れるかは悩むところですよね。作品によっても異なるとは思いますが、『国宝』に関しては、私は映画から観ることをおすすめします。何故なら原作を読んでいるときに登場人物たちが俳優さんの顔で脳内再生されるから!これは映画を先に観た場合の特典みたいなもので、原作を読んでいても映像として浮かんでくるのでさくさくと読み進められます。普段読書しない方も、騙されたと思って是非一度やってみてください。まじでさくさく進みますので!
ちなみに原作を先に読んだ場合、自分自身の中で「映画化したらこの人物は誰々かな〜」と想像してしまうことがあります。そうなると「私の思っていたキャラとイメージが違う!」となることがあります。小説はあまりないかもしれませんが、漫画の実写化とかだと多いかも?(特にビジュアル重視の作品)あとアニメ化したときも「声のイメージが違う!」とか、起こりがちかなーと思います。ただ、原作を先に読んでいれば「あのエピソードはこう料理したんだな」と分かりながら観れるので、映画をより楽しむことができると思います。どっちから触れるかは作品によって異なるかなと思います。
『国宝』に関しては、原作は上下巻ありますし登場人物もかなり多いので、映画を先に観て主要人物だけでも脳内再生できるようにしておくと良いかなと思いました。あと上下巻の作品を3時間にまとめているので、「あ、ここはカットしたんだ」とか「ここは映像として分かりやすくするためにこうしたんだ」という部分もあとで分かって面白いです。「映画を観て、原作を読んで、ネットで情報集めたりして、再度映画を観る」パターンが黄金パターンですかね!!
観た後の話(ネタバレあり)
以下ネタバレありです。
もしここまでで『国宝』に少しでも興味を持ってくださったなら、このあとの話は読まずに是非映画館へゴー!
なるべく情報を集めないで観に行ったほうが楽しめると思いますよ!
ネタバレありで書くのは私の自己満足だけですので!
ここからネタバレあり
さて、『国宝』ですが、主役は北村匠海さんではありませんでした!子ども時代の話がしばらく続くので、途中までずっと主役が誰なのかは分からないままでしたが……吉沢亮さんでした!横浜流星さんも出てきました。吉沢亮さんと横浜流星さんが出てきてからはもちろん面白いんですが、子ども時代の話も非常に良かったです。
序盤から永瀬正敏さんと渡辺謙さんが出てきてめちゃくちゃ豪華やん!となり、寺島しのぶさんも出てきたので、こりゃーガチな映画やでえ……となりました。なんか安心して観ていられるというか。
子ども時代のエピソードで引っかかった部分が一つ。
これが「原作買お」となった一番の理由でもあります。
主人公の喜久雄はヤクザの家系に生まれた少年なんですが、父親の権五郎が目の前で殺されてしまいます。親の仇をとろうとしますが失敗します。具体的にどう失敗したのかは描かれず、ドスと拳銃を構えた喜久雄と徳次のシーンのあとは、一気に一年後に進みます。え、どうなったの?と、観たときには気になる場面転換でした。映画ではさらっと進んでしまったのですが、細かいところが気になってしまうタイプでして、これ原作ではどうなってんやろ?と気になってしまいました。だって、失敗したといってもドスと拳銃持って仇討ちに行ってるんだから、捕まるとか仕返しされるとか、何かしらのペナルティがないとおかしくない?!徳次もいなくなってるし……何があったん?
と、気になったので原作読みました。読んだ結果、あーこれはややこしいわ……うん、「失敗した」で済ませてて良かったわ、と思いました。原作では立花組のほかに宮地組という組もあって、長年のいざこざがあったりするんですよね。ここを忠実に映像化しようとすると多分間延びしてしまいますし、メインどころでもないですし、監督はばっさりいったんだなと思いました。
原作では、徳次は仇討ち失敗後も喜久雄のそばにいてくれてますし、いい味出してます。もし映画を観ていてこの箇所が気になった方は、原作読みましょう。読んだら分かります(書いてて気づきましたが、ここらへんは原作購入への導線にもなっている気がする……)
他にも割と原作とは違っていたんですが、映画でばっさりカットされていた部分や分かりにくかった部分は原作を読めば分かります。他にも誰それのセリフはこのタイミングで言ってたのね~なんて部分も分かります。上の方にも書きましたが、映画の俳優さんたちのイメージで増補版を観ているような感覚で原作は楽しめますので、もう是非読んでください(説明が面倒くさくなってきたわけではありませんよ!)
原作との違いは置いといて、映画単体の話を。
3時間ありましたが、本当にあっという間でした。普段は物語がどこまで進んでどこでどう終わるのかを予測しながら観たり読んだりしてしまうタイプなんですが、今回は流れに身を投じて映画の世界に浸れました。『モモ』を読んだあとで「時間を気にしない」ブーストがかかっていたこともありますが、良い映画体験でした。
喜久雄(吉沢亮さん)と俊介(横浜流星さん)は同い年。互いに芸を磨き切磋琢磨していくのですが、二人は仲が良く、あ〜こういう関係性って良いなと思えます。二人道成寺は最高にアツくなりました。
二人の関係性が変化するのは、半二郎が交通事故にあい、代役を選んだとき。通常ならば息子の俊介が選ばれるところでしたが、半二郎は喜久雄を代役にします。喜久雄は『曽根崎心中』のお初をやることに。初日が迫り必至に稽古に励む喜久雄ですが、その様子を俊介はじっと見つめています。この時の俊介の心情は想像に難くないですが、原作ではどう描かれているのか気になるところでした(あ、ここらへんも原作購入への導線になっていますね)
無事に『曽根崎心中』をやり遂げた喜久雄ですが、俊介はその後出奔します。行方が分からないまま、月日が流れます。その後、喜久雄と俊介はどちらかが順調に行っているときはどちらかが順調ではなかったりして、なかなか二人同時に上り調子とはいきません。もどかしいところもありますが、その分、二人ががっちりと合わさったときにはアツいものがありました。でもその瞬間はまたとても短く……。一時期兄弟のように接していた間柄でも、大人になるにつれて交錯する時期が少なくなりずれていく様は、私たちにも起こることで、人間模様がリアルだなあと感じました。序盤にちょっとだけ出てくる人物があとでバシーンととあるシーンではまったり、え、ここで出てくるんや!と驚いたり、ミステリー的な仕掛けも盛り込まれていました。
吉沢亮さんと横浜流星さんの演技は圧巻です。映像が綺麗なので、これは映画館で見るべきですね。
ちなみに原作のほうは話しかけてくるような語り口調で地の文章が書かれています。文字で追うのも良いけど、オーディブルなんかで耳で聴く読書も良さそうだなーと思いました。
あと歌舞伎を観に行きたくなる!!ワタクシまだ歌舞伎を観に行ったことがないのですが、めちゃくちゃ興味を持ちました。彩ふ読書会+企画とかで観に行きたいなあ……。
以上です!!
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました!!
最後に読了ポスト貼っておきます。
では!!