そうそう!本や読書会の魅力はこれだよ!と再確認できる推し本『プリズン・ブック・クラブ――コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』

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ざっくり説明やリンク先など

今回ご紹介するのは『プリズン・ブック・クラブ――コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』です。

前々回の読書会で紹介された本です。前々から気になっていたこともあり手に取りました。

プリズン・ブック・クラブ――コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年

カナダの刑務所で月に1度開かれる読書会。ボランティアとして関わったジャーナリストが見た、囚人たちの変化とは重罪犯を収容するカナダのコリンズ・ベイ刑務所で定期的に開かれる読書会。

読書会を知っている人には「そうそう!こういうところが魅力なんだよな〜」と頷くこと多しな本です。

読書会って気になってるけど参加したことないな〜という人には「こういう体験が出来るのか!」と、読書会を追体験できる本です。

読書会って何?って方は……そもそも手に取る機会自体がないかもしれませんね。もしかすると「プリズン」のほうから辿り着けるかもしれませんが、読書会という名称を知らなければ辿り着けないかも。もしこの記事を読んで読書会という名称を初めて知ったよ!という方がおられましたら、良ければこちらをチェックしてみてください。手前味噌でございますが、そういう方に向けて書いた案内ページです。

読書会が初めての方へのご案内ページ

翻訳の向井和美さんは『読書会という幸福』というエッセイも書かれています。

読書会という幸福

ありふれた日常の中で,読書という行為がどれほどの豊かな時間を与えてくれることか.三十年以上,全員が同じ作品を読んできて語り合う会に途切れることなく参加してきた著者が,その「魂の交流の場」への想いを味わい深い文章で綴る名エッセイ.読書会の作法やさまざまな形式の紹介,潜入ルポ,読書会記録や課題本リストも

リンク先等を貼ったところで内容紹介に移ります。

内容紹介

さて、この『プリズン・ブック・クラブ――コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』という本は、著者のアン・ウォームズリーが刑務所で行われている読書会にボランティアとして参加した一年を綴ったノンフィクションです。

読書会の形式としては課題本読書会。参加者全員が事前に同じ本を読んできて当日語り合う形式の読書会です。

読書会を主催するキャロルに誘われたアンは、自身の過去の事件から抵抗感があったものの、好奇心が上回り読書会に参加します。読書会に出席するのは何かしらの犯罪を犯した人たちばかりですが、よく本を読み込んでいて、時には鋭い指摘があったりもします。

読んでいると「ああ、読書会っていいなー!!」と思えてきます。自分自身もその会に参加しているような気分にさせてくれます。取り扱っている課題本を私は読んだことがないのですが、各章の始まりあたりで内容をざっくり紹介してくれてます。で、何となく頭に入った状態で読書会参加者たちの意見を聞けるので、実際に参加しているような気にもなり、数々の課題本も既に読んだかのような気にもさせてくれます。

時には囚人同士のトラブルや設備トラブル等があって開催できないこともあったりするのですが、そこらへんのエピソードも読んでいて面白いです。

また、読書会を主催するキャロルがパワフルな感じで、困難なことがあるとすぐに打開策を講じていくところが素敵で魅力的です。

表紙やタイトルから怖い感じをイメージされる方もいるかもしれませんが全然そんなことはなく、また堅苦しくもないです。小説を読んでいるのと同じ感覚で私は読みました。

以下は読んでいて響いた部分です。

「情景描写は性的な体験と同じで、人を別世界へ連れていってくれるものだ」96p

カナダのインド系作家ロヒントン・ミストリー著『かくも長き旅』を課題本にしていた際のキャロルの訴え。この本は情景描写が多すぎて展開が遅く、読書会参加者からは小説に入り込めなかったという意見がありました。誇張ですが「描写するだけで20ページとか50ページも使ってるんだぜ」なんで意見も。

ワタクシ、本を読んでいると情景描写ってついつい飛ばし読みをしがちでして。同人誌を執筆する際にもついつい情景描写って手を抜きがちでした。そんな私にガツンと響いた訴えでした。並外れた描写力を味わうと想像力をかきたてられる、と。情景描写に着目して本を読みたくなりました。

「読書会がそこに風穴をあけた」106p

グレアムという受刑者の言葉。刑務所ではグループできっぱり分断されるようで、ムスリムのグループ、ケルト人のグループ、先住民族のグループ、ヒスパニックのグループというように受刑者は仲間同士で集まって、ほかのグループとは接触しようとしない。そこに読書会は風穴をあけたというくだりがありました。本を介することで良い距離感で自分のことも語ることも出来たりもするというところは頷きながら読んでいました。

「グレアムとフランクが読書会を立ち上げる」153p

コリンズ・ベイ刑務所での読書会に参加していたグレアムとフランクが、ビーバークリーク刑務所で読書会を立ち上げることになります。このあたりの展開は胸が熱くなりました。

「読書の楽しみの半分は、ひとりですること、つまり本を読むことよ。あとの半分は、みんなで集まって話し合うこと。それによって内容を深く理解」できるようになる。本が友だちになるの」160p

キャロルの言葉。このまま使いたいくらい良い言葉ダナーと思いました!

全部で450ページ近くあるのですが、読書会を知っている人ならうんうんと頷きながら読むところの多い本です。受刑者の中からキャロルは読書会大使を何名か任命するのですが、彼らがその後どうなったのかも描かれています。読み終わるころには少し切ない気持ちにもなったり……。

つたない紹介でしたが、以上です。430~431ページの訳者あとがきが本の内容を簡潔にまとめてくれていますので、もしご興味ありましたら書店でパラパラとめくってみてください。

おすすめです!!