2024年9月21日、東京で安部公房の『砂の女』を課題本とした読書会を開催しました。
今回は主催含め22名(女性8名、男性14名)で読書会を開きました。初参加の方が6名でした。お集まり頂いた皆様、ありがとうございました。
このレポートが初見の方もいらっしゃると思いますので、まずは「読書会について」と「彩ふ読書会の目的」についてご説明させて頂きます。
目次
読書会って何?
読書会とは、ざっくりいうと本が好きな方が集まっておしゃべりをする会です。
「本をたくさん読んでいる人の集まりなんじゃないか……」「かなり知識が必要なんじゃないか……」と思っちゃうかもしれませんが、そんなことはありません。読書量も知識量も必要はなく、必要なのは本が好きであるということだけです。読書好きの交流会=略して読書会と考えてみたら、少しハードルが下がりますでしょうか。
読書会は、本が好きな方にはオススメな会です。
自分一人では手に取らなかったであろう本との出会いがあったり、本の話題を通じて普段接点のない方とお話することが出来ます。
課題本読書会とは?
事前に読了しておいた課題本について語り合う形式の読書会です。
課題本を読書してる最中に感じたこと、読後に感じたこと等を自由に発言しあいます。参加条件は「課題本の読了」のみです。
推し本披露会が「これまで」を共有する機会とするならば、課題本読書会は「これから」を共有する機会となります。同じ本を読了したという体験こそが、まずは大きな意味を持ちます。「これはさすがに読了は厳しいだろう・・・・・・」といった本が選書されるかもしれません。何とか読了したけど、当日特に意見が出ずに沈黙してしまったり話が脱線してしまう可能性もあります。ですが、本を読んでいる間や読書会中の瞬間瞬間を共有していくことが大切だと考えております。
彩ふ読書会の目的
簡単に言えば、関わって下さる方々の「第三の居場所作り」です。
家庭でもない。
職場でもない。
貴方にとっての、第三の場所。
居心地の良い場所。集まれば何だかほっこり出来るような場所。色々脱ぎ捨てられるような空間。そんな「居場所」を作っていきたいなあと思っています。
教養を深めたり、読書の幅を広げるといった事も目的ではありますが、何より一番は集まること。時間や空間を共有していくこと。
集まって顔と顔を合わせれば何か新しいことが生まれてくる事もあるでしょう。新たに興味を持ち始めることや、やりたい事、今までやってみたかったけどやれなかった事に挑戦したくなるかもしれません。まだまだ理想を語るだけになってしまう段階ではありますが、貴方自身のやりたい事が叶う場にもしていきたい。
「彩ふ」は「いろう」と読みます。
色んな価値観を持った方々が集まり、色が美しく交じりあう、というような意味で名付けました。読書会は本関連の集まりではありますが、それは一つのキッカケとして捉えて頂けたらなと思っています。目的としては以上です。
読書会レポート
では、読書会のレポートに戻ります。
読書会に参加する方法はいくつかあります。参加申込方法のページからご確認ください。
お申し込み頂いた方には一週間前に最終確認メッセージが届きます。内容を確認し、当日は受付時間内に会場までお越し下さい。
会場に到着したら受付をしていただきます。PassMarket以外の方は当日現金払いとなりますので、受付時にお支払いをお願いいたします。グループ分けも受付時にお伝えしています。
開始時刻になったら読書会開始です。
まずは司会の私のーさんがご挨拶させて頂きます。その後、皆さんに自己紹介をして頂きます。お名前、普段読まれている本だったり好きな作品や作家さんなど、簡単なもので構いません。
自己紹介が終わりましたら、本の感想に移ります。
今回の課題本は安部公房の『砂の女』でした。
皆さん会が始まるまでには読了しておられますので、ネタバレを気にする必要なくお話することが出来ます。それぞれ感じることは違いますが、どの意見が正しいとか間違っているという事はありません。同じ作品を読んでも気になる点や印象に残るところというものは違うものです。こういう視点もあるのだ、といった部分をあえて楽しんでみると、この会は楽しむ事が出来るのではないかと思います。
難しい事を言う必要はありませんし、お喋りするのは苦手だと感じる方もいらっしゃると思いますので、無理して発言する必要もありません。
まずはお一人ずつ読んで感じたことを話して頂いて、そのあとはフリートークとなります。時間になりましたら終了です。
当日の流れは以上です。
当日出た意見はこちらです。
・4、5年前に読んだ。そのときにも口の中が砂でざらつく感覚があったが今度も同じように感じた。心理描写などで感情移入することはあるが感覚を刺激されるような読書体験は『砂の女』が初めてだった。
・若いころに読んだ。同じく口の中がざらつく感覚があった。自由、不自由について考えさせられた。自由はあやふやで怪しいものだと思い出させてくれる。60年前の作品だが時間を越え国を超えて読み継がれているのはすごい。村人がやっていることは残酷だが、優しく助けられるところに絶望を感じた。男の視点で描かれているがタイトルは『砂の女』これは何だろうって思った。
・安部公房は初読み。空想なんだけどリアリティがある。戻るも行くも地獄なのだなと思った。砂の女は社会の縮図ではないか。中古で本を買ったが前に買った人が線を引いていて売るなら書くな、書くなら売るなと思った。ただ結構良いところに線が引いている。
・安部公房の作品は他もそうだが、喜劇的で深刻にならずどんどん滑稽になっていくのが良い。選択肢が多いのが自由とされているが、そうじゃないんじゃない?と言われている気がして良かった。他人のことだってどうだっていいじゃないというのが強烈。
・学生のころに読んで今回読んだが共通していえるのは、前半男に感情移入できて読んでいるのに、最後の最後で逃げないところに共感が出来なかったところ。今回もそうだった。自分にとっての読書は共感がポイントなんだなって思った。主題は何だろう?と思いながら読んだ。全体は分からなかったが、場面場面は好き。
・幻想かつリアリティがある。愛郷精神が印象的だった。村社会の比喩。いろんな規律がある中でどう希望を見出していくのか。
・現代でいうと「脱出もの」内面部分は心理描写が多いなと感じた。
・高校のころに読んだ。熱い蒸気を浴びながら走っているような感覚や逃げるときの疾走感などすごいなと。安部公房独特の「胃がゴム手袋のような」みたいな表現が面白かった。いつでも出られるよってなるとまた今度でも良いかなと思ってしまうのではないか。
と、このあたりはお一人お一人にまずお聞きしたことでした。一巡してからはフリートークで時間まで話をします。フリートークではがちがちに話す内容を決めているわけではありませんので、ここまでに出てきた意見を掘り下げたり、新たな疑問、皆に聞いてみたいことなどを話します。
私個人として印象的だったのは、「男視点で描かれているがタイトルが砂の女」という点や「主題は何か」「愛郷精神」「文章表現」「ラストの男の心理」などでした。今回は安部公房がお好きな方もおられましたし、初めて安部公房の作品を読んだ方もおられて、良い感じに意見が飛び交う読書会となりました。ラストの解釈については、砂の穴と外側の世界は大して変わらないと思ったから今ではなくても良いと思ったのではないかとか、元々男は名を残したいという思いがあったのでもし装置を褒めら居場所見つけちゃったとなって出なくなるのではといった意見もありました。安部公房がもし現代を生きていたら、スマホやGPSなどあっても軽々と乗り越えて作品を生み出すだろうという意見も印象的でした。
お付き合いいただき、ありがとうございました。
さて、百聞は一見に如かずですので、ぜひ会場に足を運んで実際にご自身で会を体験して頂けたら幸いです。いやいや、もっと事前に調べておきたい!という方は、下のリンク先に詳しいことを書いていますので、宜しければチェックしてみてください。
課題本読書会は、普段手に取らない作品に挑戦できる機会となります。読んだことがある作品の時に参加するのももちろん大歓迎ですが、「読んでみたいと思っていたけど……」と積読状態になっている本、全くタイトルも知らなかった本にも挑戦してみていただけたら幸いです。締め切り効果がありますので、挫折していた本も意外と読めたりしますよ!
お会いできるのを楽しみにしております。
参加者からのレポート
ありがとうございます。
SNSアカウントをお持ちの方は、ハッシュタグ「#彩ふ読書会」で感想をひとことでも書いて頂けると嬉しく思います。読書会を続けていく上での励みになります。
どうぞよろしくお願いいたします。
最後に
上の方にも書きましたが、主催含め22名(女性8名、男性14名)で読書会を開きました。初参加の方が6名でした。お集まり頂いた皆様、ありがとうございました。
初参加の方や女性が安心して参加できる空間、男性も楽しめる空間作りに今後も努めてまいりますので、どうぞ宜しくお願い致します。
毎月参加して下さる方はもちろんのこと、久しぶりに参加したよ~という方々との再会も非常に嬉しいものです。本が好きな方々の第三の居場所作りが目的ですので、「また参加して良いのかな?」「久しぶりだけど大丈夫だろうか?」「前回体調不良でキャンセルしてしまったけど…」といった事はお気になさらず、「あ、この日予定空いてる!参加しよう!」くらいの気持ちで、是非お気軽にご参加ください。
初めて読書会に参加して下さる方々にも「参加してよかった!」「楽しかった」「また参加したい!」と思って頂けるよう努めてまいりますので、宜しくお願い致します。
次回東京での読書会は10/19です。
▶《東京》10/19(土) 推し本披露会(読書会) 開催のお知らせ(お申し込みはこちら)
▶《東京》10/19(土) 『黒い家』課題本読書会 開催のお知らせ(お申し込みはこちら)
12/7にはスペシャルバージョンの読書会を予定しています。
▶《東京》12/7(土) “東京読書会SP(仮)” 開催のお知らせ
初参加の方が楽しむコツは「読書会は初めてです」「彩ふ読書会は初めてです」と自己紹介の際に言っていただくことです。私のーさんはお申し込みいただいた時点で分かっていますが、他の参加者の方は知りません。「初めてです」と言っていただけると「よっしゃ!フォローしたろ!」と思ってくださる方ばかりですので、遠慮なく仰っていただけますと幸いです。
以上です。
ありがとうございました!