この作品に惹かれた三つの理由“給食のお兄さん”


給食のおにいさん
遠藤彩見
幻冬舎文庫

 

たまに「今すぐ読みたい!」という本と巡り合うことがあります。

 

今回紹介する「給食のお兄さん」はそんな本でした。

 

読書会で紹介して頂いた本なんですが、あらすじを聞いていて、おそらく今の自分が求めていることとガチッとはまっている気がしました♪読んでみて良かったなあと思います。

 

奥が深い!深かったよ!!給食のお兄さん!!!

 

簡単なあらすじを書きますと・・・・・・主人公は佐々目という男性です。コンクールで優勝するほどの腕を持ち、自分のお店を開くまでに至りましたが、開店後まもなく火事でお店を失ってしまいます。もう飲食店に勤める気にはなれなかった佐々目は、インターネットで臨時給食調理員募集を見つけます。S区の給食調理は手作りが基本、こだわりの調理、加えて残業なしで時間がきっちりしているという事で、佐々目にとってはぎりぎり妥協できる仕事でした。

 

生活費を稼ぎ、いつかまた自分の店を開こうと計画し、一年間だけ妥協も我慢も退屈も承知の上だと自分に言い聞かせます。

 

お店に来る大人たちしか相手にしてこなかった佐々目にとって、小学生を相手に300食超えの大量調理、しかも味は二の次で「安全、栄養、カロリー、塩分、予算」が優先される環境は、同じ調理をする場であっても全く異なるものでした。

 

・・・・・・ざっとこんな感じで始まる給食のお兄さん。

 

 

では、「自分が何故この作品に惹かれたのか?」を、今回は三つの理由に分けて書いてみたいと思います(^^)

 

 

まず一つ目は、舞台が給食調理場であること。

 

小学校時代、当たり前のように食べていた給食。でも、その給食は誰かが作ってくれているのだなあと今更ながら気づきました。そうなると気になる事が次々と!!一体どんな調理場で、どんな人たちが、どんな風に給食を作ってるんだろう?4時間で300名分作るとか、しかもそれを毎日とか!凄くありません?たまーに夕食作ったりしますけど、2人分で軽く1時間はかかりますわよ。300人分作るとなると・・・・・・150時間かかりますね!(単純計算)

 

保健室登校している小学生や、家ではほとんどご飯を食べれず給食だけが一日の食事になっている小学生なども登場し、佐々目は給食を通して関わっていきます。給食のお兄さんという視点が、自分にとっては斬新で興味を惹かれた部分でした(^^)

 

 

二つ目は、給食のお兄さんのスキルと職場で求められていることのズレ。

 

あらすじでも書きましたが、佐々目はコンクールで優勝するほどの腕を持っています。が、給食調理の場では「安全、栄養、カロリー、塩分、予算」が優先され、味は二の次。

 

佐々目は自分の実力を示そうと、制限の多い中でもアレンジを加えて珍しい料理を作って提供しますが、残菜率は50%超え。多くの小学生がその料理を残してしまいました。本来作るはずだったものを提供していれば残菜率は10%くらいだったはずなのに、40%近くが佐々目の料理によって残されてしまいました。学校栄養職員である毛利からも給食調理について諭されてしまう始末。味が最も大事だと考えている佐々目にとっては衝撃的な結果でした。

 

自分の持つスキルと、職場で求められていることにズレが生じることは、どこの職場でも当てはまる方はいるんじゃないでしょうか。かくいう私も「自分は本来もっとこんなことも出来るのに!」とやりたい事や出来る事と、職場で求められている事の違いに苦しんだ時期がありました。この部分で佐々目に非常に共感した次第であります。

 

 

三つ目は、佐々目の心境の変化。

 

二つ目と若干かぶってる気がしないでもないですが、三つ目は佐々目の心境の変化です。

 

給食調理(職場)で求められることよりも上回ってしまっているスキル。本来なら俺はもっとこんな事が出来るのに認められない!躍起になって、その範囲でアレンジを施し、見せつけます。

 

どうだ、俺すごいだろう?と。

 

そんな給食のお兄さんこと佐々目は、保健室登校する小学生・佑磨くんに給食を届けることになりました。

 

しかし、給食を持って行っても、その子は食べてくれません。給食アンケートで小学生たちに人気だったものでも食べてくれず、佐々目は「この子はどんな料理なら喜んでくれるだろう?」と考えるようになります。

 

「佑磨くんは開けるのが好き」と知った佐々目は、佑磨くんのために卵の殻を使った料理を作ります。

しかし、それでも手を出そうとしない佑磨くん。そこで、佐々目は気恥ずかしさを覚えながらも「ジャーン」と言います(ここちょっとウルッと来ました!)卵の殻のフタを空けると中にサクランボが入っており、佑磨くんの顔が嬉しそうにほころびました。

 

味も大切だけど、料理には心のスパイスも大切なんだ、と佐々目が気づいた瞬間でした。佐々目は小学生たちとの関わりを通して、大切なことに気づき、変わっていきます。

 

奥が深い、深いよ!給食のお兄さん!!!

 

佑磨くんのためにと考えた料理から、小学生皆の喜びそうな「くじびきハンバーグ」を閃いたり、ネグレクトの小学生や人気子役だった小学生などとの交流も描かれていたりして・・・・・・ほっこりしたり、お涙頂戴だったりと、素敵な作品でした!!

 

オススメです♪

 

 

 

 

 

そして四つ目!!(え?)

 

 

 

 

 

 

 

 

ワタクシ、小学生がとーっても大好・・・・・・逮捕ー!!(お縄を頂戴)