伏線の狙撃手による最高のご都合主義を『フラッガーの方程式』

今回ご紹介するのは浅倉秋成さんの『フラッガーの方程式』です。浅倉秋成さんは『六人の嘘つきな大学生』や『俺ではない炎上』の著者で、そっちをご存知の方は多いかもしれませんね。

私が浅倉秋成さんの作品で初めて読んだのは『本格王2022』に収録されてた短編なんですが、これが面白くて『六人の嘘つきな大学生』や『俺ではない炎上』『教室が、ひとりになるまで』を読みました。今ハマってる作家さんです。

『フラッガーの方程式』は500ページくらいありますが、おおまかに3パートくらいに分かれてるので、そんなにボリュームは感じずに読めます。

内容としては特殊設定系のミステリーです。

「誰もが主人公になれる」フラッガーシステムというものが開発されまして、そのモニターに選ばれたのが主人公の東條です。これによってフィクションがノンフィクションの中でノンフィクションとして現れます。東條は平凡な高校生で好きな子がいるんですが、奥手で話しかけることが出来ません。しかし、このフラッガーシステムを使えば好きな子とも関係を深められそうだってことでモニターになることにします。

システム稼働初日。早速両親がいなくなったりします。都合が悪いからです。
妹がやってきます。深夜アニメの定番です。

好きな子とは関係を築けないまま、他の女子とフラグが立ってフラッガーシステムに振り回されていきます。金持ちお嬢様が出てきたり、魔術師の話があったり。

東條が振り回されながらつっこみながらやりとりしていく様が面白いです。

……というのがパート2までのお話。

パート3では、新たなルートに入っていくんですが、350ページあたりからの展開は疾走感があって面白いです。

浅倉秋成さんは伏線の狙撃手といわれていて伏線の回収が上手いです。ご都合主義となりそうなシステムなのに、うまく伏線張って回収してるから、展開が回らなくて都合よく出てきた設定みたいなものは出てきません。

あと小ネタが面白い。どう考えても主人公高校生じゃないやろみたいなツッコミもあるので、作者と同じ1989年生まれ前後くらいがちょうど良さそうではあります。

深夜アニメをメタ的に扱っているところも良い感じです。浅倉秋成さんはゼロ年代の深夜アニメをよく見ていて愛憎半ばな思いがあるようで、深夜アニメをよく見てた人はああこのネタねと分かるし、深夜アニメを見てなかった人や抵抗ある人はそりゃそうなるわなあと思いながら楽しんで読めます。

ボリュームたっぷりですがさらさらと読めますので、良かったら読んでみてください!

おすすめです!