進撃の巨人みたいだな~なんて思ったら、とんでもなかった囚人番号432 マリアン・コウォジェ画集

今回は画集の紹介です。

美術に詳しいわけではないのですが、絵を見るのは好きなので、たまーに、ごくたまーに美術館寄ったり本を読んだりします。数少なく見てきた中で好きなのはトゥールーズ・ロートレックの洗濯女。

もうホント、印象で言ってるだけなんで詳しい方には色々ごめんなさいなのかもしれないんですが、どこか一点を見つめている姿にものすごく強烈に惹かれるんですよね。視線の先には一体何があるんだろう?何を考えているんだろう?どんな時代なんだろう?ってな感じで。想像するのが楽しいです。

というレベルなのですが、絵は好きなんです。

で、今回たまたま目に入ったのがコレ。

 

囚人番号432 マリアン・コウォジェ画集-アウシュヴィッツからの生還-

中丸弘子 (編集)
グリンバーグ治子 (編集)
Marian Kolodziej (原著)

 

もしご興味持たれましたら検索してみて下さい(^^)

パッと見、「進撃の巨人みたいだな~」なんて思ったんです。そんな自分に延髄チョップをくらわしたい。画集だし簡単に記事書けるやーんなんて思って手に取った自分に腕ひしぎ逆十字固めですね。Mか。俺はドMか?

指揮棒をふるう骸骨、無表情に口を開けて歌う人たち。表紙をじっくり見ていると、口の中に吸い込まれそうになってきます。

ページをめくると・・・・・もっとどえらいもんが沢山出てきます。口の中、開き方、光沢のない眼差し。夢に出てきそう。おかんが走りました。あ、お母さんじゃありません。悪寒です。(今日調子いいな!)

この絵を描いたマリアン・コウォジェイ氏は、1940年、18歳の時に政治犯としてアウシュヴィッツ強制収容所に送られました。

1939年9月、ドイツ軍によるポーランド侵攻で第二次世界大戦が始まり、ポーランドはドイツとソ連に占領されました。この中でポーランド人は地下組織を結成し、武力闘争を繰り広げました。18歳だったコウォジェイもレジスタンス運動に加わっていましたが、逮捕され、クラクフのモンテルピッヒ監獄に投獄されました。その後、タルヌフの監獄を経て、1940年6月に強制収容所アウシュヴィッツへ最初の囚人グループとして連れてこられます。アウシュヴィッツが死の工場と化していった中、コウォジェイは生き延びました。1945年5月6日、5年間の強制収容所生活を終えます。

ポーランドに戻ったコウォジェイは、クラクフ芸術大学で舞台美術と絵画を学びます。1951年、舞台美術家としてデビューし、様々な領域で活躍します。1992年に脳卒中で倒れ体の一部が不随になりました。リハビリのために鉛筆と紙を手に取った時、50年前のアウシュヴィッツの体験がよみがえったそうです。2009年10月13日にグダニスクで逝去。

この画集には、50年あまりの沈黙を破って描いた体験画の一部が収録されています。

壮絶で悲惨で残酷。そんな言葉が浮かんできました。この画集に収録されている作品を見ていると、まるで自分がアウシュヴィッツの収容所にいるかのような背筋のゾクッとするような感覚に陥ります。もしも、当時のアウシュヴィッツに自分が収容されたとしたら?なんて想像すると恐ろしいですね。ただ生き延びるだけでなく人間性を保ちながら生き延びることなんて不可能に近い気がします。

と、俺は感じたんですが、この画集を作られた中丸弘子さんは違うようです。光沢のない目と俺が感じた部分は「生きている意味を語り、それぞれが大事に生きていることを伝えていました。一人ひとりの瞳が、一緒に生きよう!と懸命に語りかけていました」とありました。なるほど、確かに言われてみればそんな気がしてきます(すぐ影響される)

中丸弘子さんは、グリンバーグ夫妻の招きでアウシュヴィッツを訪問し、全作品が永久展示されているハルメンジェで実際に体験がを見ておられます。アウシュヴィッツで感じた絶望が、コウォジェイの世界に触れたことで希望に変わったとのこと。

その後、当時勤めていた大学で授業に取り入れたようなのですが、その授業の結果をグリンバーグ治子さんと共著でまとめた本もあるようです。(生きる力:アウシュヴィッツ強制収容所の収容体験に学ぶ)

こちらも読んでみたら理解が深まりそうです。あ、あと冒頭に出てきたヴィクトル・フランクルの「夜と霧」も読んでおきたい一冊。

こうしてまた積ん読が増えていくのであった。完。

《文:nonono》

 

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