冷酷なのにピュアな秀吉「妖説太閤記」

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前回の記事でも書いたように、遅咲きの厨二病高校生時代、山田風太郎にハマりました。

初めて買ったのは魔界転生だったんですが、それから書店で見かけるたびに山田風太郎の本は買ってました。書店で~って所がポイントです。全部は読めてません。今本棚にある本を数えてみたら21冊でした。また集めようかなー。

その中から俺が一番オススメしたい山田風太郎の作品が「妖説太閤記」です。何回も読み直しているぐらい好きな作品です。上下二巻。今まで読んだ作品のうち五本の指が・・・・・・五本の指に入るくらい好きな作品です。若干、思い出補正もあるとは思いますけどね。

この妖説太閤記は豊臣秀吉の一生を描いた作品です。秀吉といえば大出世して天下人となった人。信長との草履取りエピソードやらサルと呼ばれていたことやら太閤検地に刀狩り。一夜城や中国大返しなどなどありますね。

大河ドラマや映画などでも頻繁に出てきますし、特定の役者さんで人物像を描かれている方も多いんではないでしょうか。俺は竹中直人さん。ゲームでいえば戦国無双の秀吉も結構好きな部類です。ドラマ等を観ない人でも小説でイメージしてる人もいるでしょうし、「鳴かぬなら~」で信長、秀吉、家康の三人の人柄を表現した俳句などもありますし、それぞれ色んなイメージがあるとは思います。が、まあそこは一旦忘れましょう(笑)

惨憺たるものだ。

この小説の最初の一文なんですが、彼は自分のこれまでの人生を「惨憺たるものだ」と表現します。解説にも書かれているのですが、この一文の威力が凄まじい。秀吉のこれまでの人生を表現するばかりではなく、これから始まる物語の全てを表現しています。何があったのか、これから何があるのか・・・と、グッと引き込まれます。

妖説太閤記の秀吉は、欲まみれで人間臭い人物として描かれています。女にモテたい――これが、彼の生涯における全ての原動力として描かれています。

織田信長に仕える前、秀吉は村を飛び出して野武士のむれ「蜂須賀党」に入ります。盗む、殺す、火をつける等の悪行を尽くします。体格は貧弱でもすばしっこくて頭の切れる彼は首領にも一目置かれていました。愉快な充実した日々を送っていましたが、唯一物足りないのが女でした。さらわれてきた女に彼が近寄ると妙な顔をされ、はねのけられ、仲間たちからも「猿、がらにないことはするな!」と猿どころか猫みたいに放り出されてしまいます。

その後、色々あって蜂須賀党を逐電した秀吉は、ある少女に一目惚れしてしまいます。惨憺たるものだ・・・と感傷に浸っていた時に出会った十二、三くらいの少女でした。

その女性とは、お市の方。

何と織田信長の妹!

そこは、あっかーん!!

と、読者は思いながら読むのですが、秀吉が信長の恐ろしさを知るのはもう少し後。

お市の方を何とか自分のものにしたいと考えるのですが、身分も違うため近づくことすら出来ません。しかし彼はどうしても彼女に近づきたくて様々な謀略をめぐらしていきます。一目惚れしちゃったら仕方ないよね。うんうん。

軍師・竹中半兵衛を従えてからの秀吉は邪魔な人物を排除しつつ、お市の方に近づくために自身の地位を高めていきます。蜂須賀党の首領であった蜂須賀小六を従えたり、明智十兵衛や石川五右衛門とも野武士時代に出会っていたりと序盤から何かが起こりそうな予感を感じさせてくれます。裏で秀吉がどんな謀略をめぐらしたのか、誰を動かしていたのか、その原動力は何だったのか、秀吉は何を秘めていたのか。

周囲には陽気で無害な人物だと思わせておきながら、内心、邪魔者は機会があればいつでも排除しようと考えている。仲間でさえも・・・・・・といった冷酷さには背筋がゾッとします。しかしながら、お市の方に対しての純粋さも兼ね備えている。彼女の境遇に伴って感情を振り回されてしまうところもあったり、欲望まみれで誰も信用出来ず徐々に壊れていく秀吉の姿は、とても人間臭い。誰もが理解出来てしまう部分があるのではないかと思います。

これを読んでしまったら他の秀吉像はジャックされるかもしれません。陽性な秀吉が描かれる別の作品を読んでいても、「内心こんな事を考えてるに違いない」と探りながら読んでしまうかも(^_^;)

例えばドラマなんか観てて、主人公が去ったあとに残された人物のアップが映ったりするじゃないですか。あれを秀吉にされると「あああ・・・今何かやばい事考えてるー!」ってなります(笑)

史的事実もきちんと押さえているので、おおこうきたか!と唸らせてくれる作品です。

良かったら是非(^^)

《文:nonono》

 

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