孤独感や劣等感、友達づくりに悩んだり、周りに壁を作りがちな人に読んでほしい本『苦役列車』

こんにちは。のーさんです。
2024年からはnoteを本格的に使用しています。
推し本紹介やコラムはあちらで更新していますので、良ければフォローをお願いいたします。こちらの記事は、noteが使えなくなった場合に備えた記録用です。

noteのアカウントはこちらです。

ののの@彩ふ文芸部(彩ふ読書会)
https://note.com/iro_doku

西村賢太さんの『苦役列車』を読みました。

これは私のことか!?と思いました。無性に私小説を書きたくなりました。

激おすすめ!!

目次

  1. あらすじ
  2. 読んだ感想
  3. 読んだきっかけ

あらすじ

主人公は北町貫多という19歳の男性。実の父親が性犯罪を犯したことから、自分はどう頑張って人生を歩んでも、性犯罪者の息子だと知られたら途端に道を閉ざされるという諦観があります。また素行も悪く周囲から距離を置かれ、協力してくれる人がいません。高校に進学せず、母からも離れ、家を借りて生活を始めます。その状況で働かせてくれる場所もなく、行き着いたのが日雇い仕事でした。日給5,500円は酒と風俗代に消え、手元にはほとんど残らず、家賃の支払い等は滞ります。残金を計算して動くので、日雇い仕事も行ったり行かなかったりですが、その生活を続けて3年以上が経ちます。

ある日、貫多は専門学生の日下部と知り合います。日下部は夏休みの間だけ働きに来た身でしたが、現場に向かうバスや休憩時間に顔を会わせ、仕事終わりに飲みに行ったりしていくうちに、貫多は彼に対して友情めいたものを感じるようになります。日下部の影響を受けて、貫多も休むことなく毎日仕事に出るようになり、倉庫内での作業を手伝わされるようになっていきます。日下部のおかげで光が見えてきたように思える貫多でしたが、それからどうなっていくか……というところは是非ご自身で読んでみてください。

著者の西村賢太さんが芥川賞を受賞したとき、受賞の言葉が「風俗に行こうと思ってた」だったのは、そのころはあまり読書してなかった私でもテレビで見て知ってたくらいなので、きっと有名なはず。バラエティ番組に出ていることもあったので、顔は知ってるという方も多いのではないでしょうか。

読んだ感想

先にも書きましたが、これは私のことか!?と思いました。貫多と全く同じ人生を送ってきたわけではありませんが、自意識過剰だったり、ヤケになってしまったり、周囲との壁を作ろうとしてしまったり、そんな心情は私にもあるなあとグサグサ刺さってきました。地元から関西にやってきて、なかなか自分の未来を描けなかった二十代前半を思い出しました。

貫多自身は孤独感を抱いている感じはありませんでしたが、それでもたまにふと自分にはなぜ恋人もいないのか、友達もいないのかと思います。孤立はしています。読んでいる身としては、「そりゃそうなるわ……」と感じる行動を起こしてしまうのが貫多。グッと言葉を飲み込めたらいいのについ言っちゃう。「こうしたら良いのに」という場面でヤケを起こしちゃう。周囲に壁を作ってしまっています。物語の主人公だから一歩離れて読めるわけですが、現実として自分自身もやってないか?とハッとさせられます。

貫多は日下部に対して、心のどこかで親のすねっかじりめと見下しています。一方で話しやすさも感じ、彼のことを気に入ります。同じ現場で働いているものの、それぞれの置かれた環境は異なることを、貫多は次第に自覚していきます。見下したり見下されたり劣等感を抱いたり、利用しようと考えたり。この二人の関係性を見ていると、「友達」についても考えさせられます。

ちなみに読んでいる最中に「友達のつくりかた」の記事をたまたま見つけまして、面白かったのでこちらもシェアします。お笑い芸人チュートリアルの徳井さんとルームシェアしていた、吉本興業のNSCで講師も務める桝本壮志さんのコラムです。

大人になってからの友達のつくりかたが分からない…令和ロマン、EXIT兼近らを育てたカリスマ講師の答え(外部サイトに移動します)

そもそも大人は「友達づくりに適さない」という見出しにぐっと惹かれました。そうだよねー、学生時代のときとはまた違うもんねえ、と頷いちゃいました。ゲームにたとえているので分かりやすいです。

孤独感や劣等感、友達づくりに悩んだり、周りに壁を作りがちな人に『苦役列車』はぜひ読んでほしいです。読んだからといって答えが見つかるわけではないでしょう。ただ、多分この本を読んだあと、ふと日常生活で思い出す場面がきっと出てくると思います。

私の場合、それは『コンビニ人間』だったり『おいしいごはんが食べられますように』だったり『ハーモニー』や『動物農場』、『一九八四年』『蠅の王』『モモ』『仕事は楽しいかね?』『アルジャーノンに花束を』『幼年期の終わり』が該当します。日常生活に影響を及ぼすってやつ。

まだ読書会を行ったわけではないのでそこまでではないですが、私の中では「日常生活に影響を及ぼす系作品」にインされました。『苦役列車』で課題本読書会やりたいですねー。

https://note.com/embed/notes/nec13ed898574

あとこの作品を通して知った田中英光や藤澤清造の作品にもいずれ触れたいなと思います。

読んだきっかけ

読書会でも紹介されたことがあったんですが、一番のきっかけはとある紹介文を読んだことでした。宣伝かーい、となりそうですが、紹介文が収録されているのは『『寺×走るアンソロジー』別冊誌面推し本披露会「煩悩の数だけ走る時に読みたい本」』です。

そう、私たちが今作っている同人誌です。

宣伝のつもりはありませんが、リンクは貼っておきますね。

【出店&予約受付実施中】1/18の文学フリマ京都10に出店します@彩ふ読書会

まだ本は完成していませんが、それぞれの原稿は読んでまして、その中のお一人が『苦役列車』を紹介されてます。その文章を読んで、「あ、読みたーい!!」となったわけでして。文学フリマ京都10でお披露目しますので、ぜひその文章だけでも読んでみてください!!(やっぱり宣伝するっていう)

以上!おわり!