また会えるかは分からないけど 推し本紹介『チュベローズで待ってる』

読書会で紹介されたことをきっかけに読んだ本は沢山ある。それらを手に取った理由は、紹介されて単純に気になったからというのもあるが、もう一つ理由がある。

紹介してくれた貴方とまたお話がしたい、という思いだ。

読書会は一期一会だ。

初めて参加した方に「読書会楽しかった!」と思ってもらえるよう、彩ふ読書会は力を入れている。何をおいてもそこが一番大切だからだ。初めての方にとっては、「読書会ってこういうものか~」と想像していたものが具体的なものとなる日である。楽しければまた参加してみようかな、という気持ちにもなるだろうが、楽しくなければそこで終わるだろう。それは、彩ふ読書会だけでなく、他の読書会さんへの参加の可能性も担っている。下手すれば読書会全体に「こんなもんか」というイメージを植え付けてしまいかねないのだ。主催する身としてはプレッシャーでもあるし、常に誠実な姿勢でありたいなと思わせてくれる部分でもある。彩ふ読書会で初めて読書会を体験した方は多い。一回きりで終わってしまう方もいれば、続けて参加してくれている方もいる。数か月後にまた参加される方もいれば、課題本が〇〇だったから参加しようと思った、という方もいる。人それぞれ参加頻度は違う。

あえて言わせてもらうと、読書会の醍醐味は2回目以降の参加である。

初めて参加した時に出会った方々と、また会う機会となるからだ。推し本披露会に参加されてた方ならば、「紹介されていた本読みましたよ」なんて話題になることもあるし、何より初めて出会った時よりも再会した時のほうがグッと距離は縮まる。課題本に参加された方ならば、「参加した回の課題本を読み終えている」という共通点が既にあることになる。再会した時にまたその話題になることもあるし、同じくグッと距離は縮まる。参加すればするほど顔見知りも増えていき、居心地も良くなっていく。仲良くなった人ができたら、一緒に何か新しいことを始めたいと思うようになることもあるかもしれない。もし都合があえば、いつでもまた参加してほしい。

私が読書会を立ち上げようと思ったときモデルにした人がいる。とある美容院のスタイリストさんだ。初めて来店した時に雰囲気がすごく良く、続けて予約したのだが、2回目に来店した際、1回目に話していたことをよく覚えてくれていた。それから何度も通っているが、だいぶ前に話したことも覚えてくれていたりして虜になった。通い続けてもう8年になる。私は理容院も美容院も苦手なタイプだったのだが、このスタイリストさんのおかげでパーマ頭にも挑戦出来たし、最近でも黒髪にハイライト入れたりと髪型を楽しむことが出来ている。

幸い、私も記憶力は良い方なので、読書会に参加してくれた人のお名前や顔、何を紹介したかは大体覚えている。今はまだマスクをしている方も多いのでたまに分からなくなってしまうこともあったり、紹介された本といっても同じテーブルになった人に限るのではあるが、また参加してくれた時により居心地の良さを感じてもらえるよう、極力コミュニケーションをとっていきたいなと思っている。ただ、私は元々口下手なほうなので、喋りたいという気持ちはあってもなかなか話題が思いつかなかったりもする。共通点探しが苦手なのだ。

なら、共通点を作ったら良いじゃないか。というわけで、紹介された本を読んでいるわけである。

ただ、私の場合、読んでも声をかけるのを忘れてしまうことがある。割とある。今このタイミングで話せたのに!という機会が結構あったりする。メモをとるべきなのか、どうしようかなーと思っている今日この頃である。

さて、今回紹介する本も以前読書会で紹介された本である。ちょうど1年前、2022年12月の回だ。加藤シゲアキさんの本は読んだことがなかったのだが、上下巻ではなく表記がAGEというのが面白いなーと感じて気になっていた本だった。「上」「下」だったら手に取ってなかったかもしれない。AGE22とAGE32で、二つの本の中に10年の歳月が流れることが分かったので、そこに惹かれたところがある。

「AGE22」のほうは、就職活動で失敗した主人公・光太が、カリスマホストの雫にスカウトされてホストになる話だ。読んでいると自分自身の20代の頃も思い出した。先が不安で、何かよく分からないものに押しつぶされそうな感覚があって、紛らわせるために何かに没頭したり現実逃避したりして。そういった時期が私にもあったので、光太の心情がよく分かるなーと思いながら読み進めることが出来た。ホストとしてもなかなか売り上げを伸ばせず指名ももらえない状況が続いていた光太だったが、美津子という女性と出会ったことで状況が変わっていく。

「AGE32」のほうは「AGE22」とはまたテイストが変わってくるが、「AGE22」で知り合っていた仲間たちに助けを借りながらとある事件に挑むことになる。光太が10年近く年を取っているのと当然同じく仲間たちも10年近く年を取っているので、「AGE22」の時とはまた違った状況になっている。それでも何かがあれば助け合える関係というのは素敵だなと感じた。ネタバレしてしまうのはあれなので詳細を伏せて書くとなかなか書ける部分が少ないが、これは是非とも読んでもらいたい作品だ。

加藤シゲアキさんの作品は初めて読んだが、反転する関係性というか、繋げ方が上手い方だなと感じた。弱い立場、強い立場、それらがクルクルッと反転する様は、読んでいて楽しい。

冒頭に「読書会は一期一会~」ということを書いたのは、この『チュベローズで待っている』を読んで無性に羨ましくなったからだ。特に光太と雫の関係性が良かった。出会い方も好きだったが、それから何年経ったあとでも再会したら変わらず接することが出来る関係の相手は貴重だと思う。

私自身も、読書会を通して出会った方々との関係を大切にしていきたいなと、改めて感じた次第である。

また会えるかは分からない。会えている人たちとも、いつまでも会えるかは分からないし、当たり前なことではない。会えた時には貴重なひとときを大切に過ごせるように、生きていきたい。

大体いつもは読み直して書き直してするのだが、ちょっとそういう気分にはならない。前半部分とか特に読みづらいなーと自分でも思うのだが、思うがままに書いたものをここに残しておくことにする。笑いもないが、これにて今日は終わる。