手のひらの音符/藤岡陽子


手のひらの音符
藤岡陽子
新潮文庫

 

読書会で紹介して頂いた本を実際に読んでみて、これまでにも何冊か紹介してきてるんですが、ちょっと気づいたことがあります。

 

本を読む時、ある意味二つくらいの視点で読んでいるな~と!

 

自分の視点と同時に、紹介して下さった方がどんな風にこの本を読まれたのかな?という事も想像しながら読んでいる自分がおります。一粒で二度おいしいってやつですね!(・・・・・・あれ?文章にするとちょっと気持ち悪い人みたいになっている感・・・・・・うへうへっ!←さらに煽る笑)

 

さて、そんなこんなで今回も読書会で紹介して頂いた本の紹介です!

 

読書会で紹介された方は「良い小説を読むと幸せな気分になれます!」という帯に惹かれて手に取ったとのことでした。「ホンマか?」と若干疑いの眼差しを向けながらも、実際に読んでみたら心温まる本でほっこり、めっちゃ泣いたとのことでした!

 

ほうほう!

 

ワタクシ涙腺弱いですからね!

 

泣く自信はあるぜ!

 

結果!泣きました(;_;)

 

これは課題本向き!!多分それぞれで印象に残るシーンが違う気がしてます。感じることも沢山あるし、読後感もすごく良い。

 

というわけで、いずれ読書会の課題本にしたいなーと思ってます(^^)

 

では、ここからはネタバレ含みますので、まだお読みでない方はバックバック。

 

 

 

 

~~~以下ネタバレ含む~~~

 

 

 

 

あらすじとしては、デザイナーの水樹が勤める会社が服飾業から撤退することになり、これから自分がどうするのか悩み、人生を見つめ直すお話です。水樹は45才独身の女性です。

 

服飾業から撤退する事を知った時「これまでどんなふうにして、自分は立ち直ってきたのだろう?辛いことや悲しいことが起こった時、どんなふうに?」と考える水樹が印象的でした。がむしゃらに仕事に邁進してきた水樹は、自分自身のことが分からなくなっていました。

 

それからは過去の回想をまじえながら現在が進んでいきます。同級生・信也との思い出が主に描かれていきます。信也とは家族ぐるみの付き合いがあります。

 

個人的には父とのエピソードが好きでした。

 

信也の父親が亡くなり、葬式の日であるにもかかわらず水樹の父は競輪場に足を運んでいました。ギャンブル好きでどうしようもない父親だから、「こんな日なのに!」と周囲は激怒します。水樹もこんな日によく遊ぶ気になれるな、と軽蔑して父を見ます。

 

しかし、実は父親は父親なりの別れをしていたのでした。

 

「森嶋の親父さん、病気する前は競輪選手やったんや。(中略)おれなりの別れをしとったんや、さっき競輪場で。悔しかったやろうなと思ってなぁ。もっと走りたかったやろ。ガキを三人も残して逝くのは辛いやろう、ってな」

 

不器用で周囲に誤解されやすいタイプだとは思うんですが、自分なりの形で亡くなった方とのお別れをする。そんな父が個人的には好きでした。

 

144ページからは怒濤の展開です。読むスピードが加速しました。

 

信也の弟・悠人はいじめられやすく、ある時カメムシを食べさせられました。気づいた信也はいじめていた子たちに対して激怒します。その場はおさまったものの、その後いじめていた子の親が乗り込んできて、信也を囲みます。問答無用で信也が悪いと決め付ける親たち。

 

父のエピソードや、カメムシのエピソードを通して感じたのは、この作品では「一つの視点で物事は語れないということが描かれている」のかなあ、と感じました。

 

それからしばらくして水樹と信也は離れ離れになってしまいます。

 

感じたのは、孤独な信也に寄り添えるのは水樹しかいないのではないのか、という事でした。信也が大きな出来事を経験していくときに常に傍にいた水樹。何が出来るわけではなかったとしても、その時そばにいてくれた存在は、きっと信也にとっても大きいんじゃないかなーと。

 

転換点となるような出来事を経験したときに傍にいた人たちって、やはり他の方とはちょっと違ったりするのかなあと、自分自身の過去を振り返ってそう思います。そこに固執せずに新たな関係性を築き上げていくことも、もちろん大切ですけども。

 

164ページの三つの層の話も印象的でした。

 

・生まれながらに持っている性質
・その性質に、環境や経験が影響して性格を作る
・それがさらに年を重ねていくと性格を人格で覆うことが出来るようになる

 

性質、性格、人格。この三層で人は成り立っている。というお話です。なるほどな!と。あ、それだけですけども(^^;)

 

他にも
・それぞれの闘い方がある
・好きだけど好きじゃない
・自分をこれだけ好きになってくれる人を好きになれない

 

といった部分も印象的な所でした。

 

全体的に、感情の機微が素晴らしいと感じる作品でした。

 

水樹の母にも信也の母にも名前が付いていて、二家族の話が同時に進むので、ちょっと誰が誰か分からなくなりました。母は母で良かったんじゃないかなー?なんて思いながら読んでいたのですが!

 

286ページ目でそれが活きてきます。あ、名前をつけていたのってそういうことだったのかな?と。

 

母にも母の物語がある。

 

水樹の母ではなく「君子」として、生きている。そんなことを感じるエピソードでした。

 

水樹と信也二人の話かと思いましたが、そうじゃなかったです。周囲の方々にももちろん背景があるんだよ、と教えてくれる作品で、だからこそ多分読む人のバックグラウンドによって感じることは違うだろうなーと感じました♪

 

あと307ページの「諦めるって気持ちは、周りの人間に伝染するんだ」という言葉も素敵!

 

まとまりがなくなってきましたが、大体こんな感じのことを思いました♪

 

オススメですので、是非読んでみてください~(^^)